日本の成長戦略を考える場合、環境、農業、社会保障分野、あるいはロボット等の技術を語ることが多いが、蔦さんは"再成長のエンジン"として「クール・ジャパン、日本の文化を基盤とした高度の付加価値をもった産業の創出に活路を見出そう」という。
そして、そのターゲットは、発展し、増大するアジアの中流層だと指摘する。中流層とは必要な家電製品や自動車や日常品をほぼ揃え、そのうえに安心、安全、健康、介護、教育、福祉、エンタテインメント、環境、感動を求める生活などを価値と考える層だ。その数、すでに1億人以上、さらに加速度的にふえるという。
ファッション、アニメ、マンガ、ゲーム、映画などのコンテンツ、和食、農業産品、日本の伝統と技術、観光、スポーツ、文化などの現状を詳細に述べ、もっともっと戦略性をもって挑めという。全くその通り。それにしてもこうした分野に蔦さんが詳しいのには驚いた
環境重視ということも、根本的には安田喜憲さんがいうように文明の転換(価値観、生活スタイルの大転換)なしにはできないが、福祉社会(国家)というのもまた、人々の考え方、心そのものが大きく変わらないと築き得ないのではないか。
「福祉とは、社会のなかでお互いの生活を保障すること」であり、「民主主義=自由+平等+連帯+共生となる」と千葉さんはいうが、はたしてどれだけ、自由には責任やルールを守ることが同時に求められており、平等では、その人に適した権利が平等にあるということなどが身体と心で理解されているかと疑問を投げかける。
それは消費税25%というデンマーク、女性専用車両や凹凸の大きい点字ブロックなどは逆差別と思う欧州の感性、税金でも「出した分だけもらわなくては損」と考えるのではないという、「自分だけがよければいいのでは国はよくならないという」思考。貧困、不正のない国、教育、福祉など、具体的にデンマークという国を示してくれている。
隣りのスウェーデンに行った時も、私自身、国民の思考自体が気候・風土・民族性などに大きく起因するという、いわば人生地理学的な思いにひたったものだ。
世界の水紛争、国際河川の上流と下流国、水質汚濁、日本に流れ込む国際河川、食糧危機と水、ウォーター・バロン、汚れた水をきれいに、水道破綻と民営化、食料を大量輸入する残飯大国・日本・・・・・・。
「私たちは、過度に贅沢な暮らしに別れを告げ、ほどほどの生活に切り替える時期にきている」「これが食べたい(牛肉は飼料、そこには水)、これが着たい、これが欲しいと言っていたらこの世界は行き詰まる」と橋本さんはいう。
身近な水道料金や東京のおいしい水や各自治体の取り組みから、世界の水不足の生活実態や水紛争、ウォーター・バロンの戦略まで、水問題の重要性をていねいに語ってくれている。中川昭一さんと私は、このことで話したことがあった。