天下 上.jpg天下 下.jpg

苦労つづきで、不器用でけっして格好もよくない。だが、肚をくくって一筋の道を走り続け、その果てに生きて大地をしっかり踏み締めた。家康の姿が自分の胸のうちで重なるようになったという火坂さんの遺作となった長編小説。


「天下は一人の天下にあらず、天下は天下の天下なり」「天下は一人、太閤殿下のものではない。ましてや、わしのものでもない。万民のためにこそある。その民をないがしろにした者は・・・・・・」「天はつねに勝った者の味方だ。さればこそ、わしは必ず生き残る」――。


水、柿田川湧水から小説は始まる。時は永禄7年(1564年)正月の三河岡崎城。若干23歳の少壮気鋭の城主に一向一揆が迫る。そして終章は関ヶ原への出陣を決断する江戸城。わずか40年足らずの間、めまぐるしい動乱、戦乱、その戦国乱世に終止符を打った家康の実像を掘り起こす。


三河、遠江(州)、南信(濃)という、私の生まれ育った地域が戦乱の中心地として描かれ、友と遊んだ朝倉川や仁連木まで活写されていることもうれしく、思いが時空に広がった。


風に舞う一葉.jpg

「身近な日韓友好のすすめ」と副題にある。金さんは、韓国・ソウル生まれの国際法学者で、「テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言」(早稲田大学出版部)など、テロに関する国際法の専門家。


本書はその専門とは全く別。嫌韓・反日のどぎつい風潮が飛び交うなか、「四季を想う」「食を楽しむ」「文化・習慣を知る」「アジアの心をつなぐ」「平和への願い」など、日常のなかに、いかに日韓の共通性、交流があるか、長いつながりがあるか――そうしたことを愛情を込めて書く。一部の激しい対立ではなく、落ち着いた日常をかみしめるなかに理解がある。その身近な日韓友好が大事だということを静かに語る。「スイカに塩をかける日本、砂糖をかける韓国」「月を見てウサギの餅つきと感ずるのは日韓共通」など、面白い日常の話題も語られる。


危機管理の死角  小川和久著.jpg

軍事アナリストとして、危機管理のプロとして、実際に政府、地方自治体の危機管理に携わってきた小川さんの警世の書。今こそ必要な書だ。


「狙われる企業、安全な企業」と副題にある。「巨大企業の危機管理についてのコンサルタントをしてきたが、情報が氾濫する一方で、日本企業の危機管理レベルは低いままで推移しており、その立ち後れに警鐘を鳴らし、日本の経済立国を基礎の部分から確かなものにしたい」と考えたからだという。


日本の場合、たしかに「危機管理を語る」だけで、危機意識そのものが、トップを含めてなさすぎる。世界では国も企業もどうしているか、小川さんがコンサルタントをして各組織はどう対応したか。何から始めようとしたか。防災も、私は「危機管理は実務だ。現場だ。リーダーシップだ。日頃からの情報収集、備えだ」と考えてきたが、本書は、世界がより高度化、複雑化しているなかでの危機管理の水準を示している。


「海外緊急事態」「日本の危機管理は形だけ」「社員と家族を脱出させるためのコストは月1000万円」「平時型組織しか知らない日本人」「コンサルタントを活用できているか」「日本も政府も危機管理はCEOにしかできない」「日本に求められるテロ対策」「企業人のための情報活動のイロハ」の8章よりなる。


誰も書けなかった「笑芸論」.jpg

たしかにこの「笑芸論」は高田さん以外は「誰も書けない」ものだろう。「森繁久彌からビートたけしまで」の戦後「笑芸史」が、紙面からあふれるほど、ものすごいスピードで四方、八方、空間狭しと飛び出している。「私のこの両目は誰よりも沢山の面白い人を見つめてきたし、私のこの両耳は誰よりも多くの笑い声を聞いてきました。その量だけが自慢です。・・・・・・」と結んでいるが、その通り。


笑いが大好きで、今も「エンタの神様」をはじめお笑い番組を録画したりする私だが、テレビ等で観てきたスターたちの生の姿にふれた本書は、きわめて面白かった。この60年を思い出したりもした。また地方から見て、当時の「東京」への感情の核にふれた思いもした。


富士山噴火 高嶋哲夫.jpg

火山噴火は、台風・水害・土砂災害とも地震とも違う。台風等はタイムラインが通用する。地震は予知できないうえに、瞬時の大災害だ。しかし火山噴火は、予知等はある程度できるが、規模や終結までの期間の判断が難しい。


 富士山噴火という大テーマに、高嶋さんが挑んでいる。「美しき山」「異変」「避難」「噴火」「火砕流」「山体崩壊」の6章だてだが、危機は深刻化していく。首長や組織を担っている者が「避難」の決断を下すことがいかに難しいか、火山灰の影響(目をこすらないとか、雨によっての火山泥流)、噴石・火山灰・火砕流のなか、どこへ、いかなる方法で、避難を行うか――まさに陸海空全てに常識を超える国をあげての対応が不可欠となる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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