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人間形成障害とは「親・家庭・社会などの文化的環境(生育環境)の歪みに由来する心身の適応能力の成熟障害(年齢相応にたくましく成長していない)」と定義される。「脳を進化させた人間の種としての特性」や「経済成長に由来する構造的な育児環境の崩壊」などの要素が複雑に関わっているが、日本の育児環境の劣化がめだつ。「子どものままで大人になれない」という問題に対処するには、習慣の修正と年齢相応のたくましさの充実が目標となる。


「人間形成障害とは何か」「なぜ人間形成障害になるのか」「普遍化する人間形成障害」「わが家でできる人間形成障害の予防法」「治療法」「大人は何をするべきか」等々、わかりやすく、実践的に示してくれている。


危機の外交.jpg

「首相談話、歴史認識、領土問題」と副題にある。現在の外交、安全保障の焦点に、直接、端的に、解説を加え、具体的に提言を行なっている。今、できること、やらねばならないことが熟考されている。


前著「日本の領土問題――北方四島、竹島、尖閣諸島」(2012年2月)、「歴史認識を問い直す――靖国、慰安婦、領土問題」(2013年4月)に続いて、今回の「危機の外交」で論点はより鮮明になり、この2年間で、いかに「日中首脳会談」「平和安保法制」「慰安婦問題と徴用工問題、国交正常化50年目の対韓国外交」「ウクライナ危機以後の日ロ関係」など、変化が生じているかを改めて感ずる。


「交渉で一番大切なところに来た時、相手に"51"を譲り、こちらは"49"で満足する気持を持つこと」と祖父・東郷茂徳が言ったということを、母から聞くことから、本書は始まり、歴史問題と領土問題の「非政治化」を解く。外交における「道徳性の深さ」「富国有徳」「文化大国」「世界の中での日本(孤立を回避)」、きわどい時の「人間哲学」の大切さも感じさせる。


お客様満足を求めて.jpg

経営哲学、リーダー論、人間学、人生哲学。「お客様満足」の理念は、「現場で、現物を、現実に」という「三現主義」を大事にする実践に貫かれている。


「(経営者の役割は)時を告げるのではなく、時計をつくる」「チャンスは貯金できない(今がチャンス)」「朝令暮改もいいが、今、朝令暮改では遅すぎる。今は朝令朝改の時代だ」「入りやすい入口に出口はない(事を成す場合に、なぜ事を成すかという理念が必要だ。しかし、その理念を安易に変えてはならない。入りにくくても、出やすい道筋を選ぶべきだ。"現実"という名のもとに、着手しやすい入口に飛び込まないことだ)」「市場の変化はお客様の行動の変化。そのお客様行動の変化、ニーズをどうつかまえるか、読むか」「国際社会の常識――長く話せ、自慢に徹しろ、絶対に自分の責任を認めるな」「あと1%だけ、やってみよう(あと1%を追求し続ける)。自分の信念・発想を100%達成する気概」――。


アサヒビール、NHK、新国立劇場、東京芸術劇場のトップを歴任した福地さんの境地と読書。


若冲.jpg

江戸中期の絵師・伊藤若冲(1716~1800)――京都の青物問屋「枡屋」の長男でありながら、商売にも世間の雑事にも全く興味を示さず、絵に没頭。緻密、大胆、切れ味、彩色、鮮麗、奇抜、力感、鬼気、開明、挑戦、精神性――何故に執念なくして生じないそうした作品が生まれたのか。若冲内奥の煩悶と苦悩の「業」を、澤田さんがこれまた最後の一行まで力をそらすことなく書き切った圧力ある作品。


妻「お三輪」が首を吊って死んだことを心奥に抱き筆をとる若冲。その復讐に一生をかけ、対抗の贋作を描くお三輪の弟・弁蔵。この2人の怨憎が軸だ。「少しでもいい絵を描かねばという煩悶は、君圭(市川君圭=弁蔵)に真似のできぬ作を残すのだという焦りと表裏一体。極言すれば、自分を脅かし、時に絶望の淵に突き落としてきた彼がいたからこそ、若冲はあの奇矯と陰鬱が入り混じった絵をこれまで書いて来られたのだ」――。そして「目の前の屏風は、若冲なくしては在りえず、君圭なくしては描けぬ異形の鳥獣画。そして同時に伊藤若冲は君圭あっての絵師であり、市川君圭もまた若冲あっての画人。ならば君圭の絵と自分の絵に、もはや彼我の別などありはせぬ」「美しいがゆえに醜く、醜いがゆえに美しい。そないな人の心によう似てますのや。・・・・・・何故、世人は端整秀麗な円山応挙の絵を求める一方で、奇抜な若冲の作を渇仰したのか。彼らは知らず知らずのうちにあの奇矯な絵に自らでは直視できぬ己自身の姿を見出していたのだ」という境地に至る。


周辺には交流のあった池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁らの絵師、そして妹・お志乃、中井清太夫らが絶妙に配置されている。


無電柱革命.jpg

「電柱林立国家」「電線病」の日本を変え、街の景観を一新させ、安全性を高める。景観と防災、「安全、安心、広々感、美しさ」だ。


電柱の総数は1987年に3007万本、そして2012年には3552万本。無電柱化を進めてきたにもかかわらず、毎年7万本が新設されている。ロンドン、パリは100%、ベルリン99%、ニューヨーク83%。日本で進んでいる東京は7%だ。無電柱化が進んでいるのに、電線数が多いと感ずるのは、国道や都道で地中化が進み、より身近な市区町村道が進んでいないからだ。


課題は明確だ。「どこで無電柱化工事をするかの住民の協力、事業者、自治体との合意形成の向上」「安全性・美観・利便性が必要という国民の意識改革(工事への理解が不可欠)」「費用負担を下げるための努力」「事業者の調整、工事推進への配慮」「直埋、共同溝など既存ストックの活用、地域の条件により柔軟に対応(金沢方式など)」――。


より根本的にいえば「生産効率追求型社会を、生活のアメニティ(快適さやそれをもたらす環境)重視社会へと重心移動させる」との指摘は正しい。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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