
「首相談話、歴史認識、領土問題」と副題にある。現在の外交、安全保障の焦点に、直接、端的に、解説を加え、具体的に提言を行なっている。今、できること、やらねばならないことが熟考されている。
前著「日本の領土問題――北方四島、竹島、尖閣諸島」(2012年2月)、「歴史認識を問い直す――靖国、慰安婦、領土問題」(2013年4月)に続いて、今回の「危機の外交」で論点はより鮮明になり、この2年間で、いかに「日中首脳会談」「平和安保法制」「慰安婦問題と徴用工問題、国交正常化50年目の対韓国外交」「ウクライナ危機以後の日ロ関係」など、変化が生じているかを改めて感ずる。
「交渉で一番大切なところに来た時、相手に"51"を譲り、こちらは"49"で満足する気持を持つこと」と祖父・東郷茂徳が言ったということを、母から聞くことから、本書は始まり、歴史問題と領土問題の「非政治化」を解く。外交における「道徳性の深さ」「富国有徳」「文化大国」「世界の中での日本(孤立を回避)」、きわどい時の「人間哲学」の大切さも感じさせる。