「説得力」は重要。仕事におけるプレゼンテーションでも、日常の対話においても。しかし、簡単なことではない。問題の急所を、わかり易く語るには、当然、勉強量の蓄積は欠かせない。問題の所在が蓄積されていなければ、相手にもされない。
そのうえでの技術――高嶌さんは「人間的な魅力」「説明する能力」「納得させる能力」をあげる。そして、いきなり重大な頼みごとをせずに抵抗感を和らげておいて説得に入る「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」や、その逆の「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」、そして、相手が受け入れやすい頼みごとをして承諾してもらった後にオプションを増やす「ロー・ボール・テクニック」、勝ち馬に乗りたい同調心理をくすぐる「バンドワゴン効果」などを紹介する。
この社会で生きていく以上、説得力は不可欠――しかし演説と、会議などの説得力は異なると思う。
昨年は末次一郎氏没後10年の「学ぶ会」が行われ、最近は野田総理が初の沖縄訪問で胸像を訪ねている。現代社会の不安と閉塞感、破壊衝動の風潮とポピュリズム――そんななかで昭和56年に発刊された本書を読んだ。思うことは、イデオロギーに流されずに働く「奔走」ということだ。生きざま、国(民)を担うということ、実践ということだ。
「大陸に残された同胞の救出や支援(引揚援護活動)」
「戦争受刑者の釈放」
「核抜き、本土並み、72年返還への沖縄返還」
「四島一括を求める北方領土返還」・・・・・・。
とくにあくまで実践者、運動家として、いつも初めは小さく、そしてうねりが大きく展開されていく。健青クラブ、日本健青会も、沖縄に国旗「日の丸」を贈ることも。「評論ではなく、動きをつくる人」「破壊ではなく、汗を流して創る人」が大事であることは、時代を超える。
東日本大震災、また首都直下型地震の危機管理や対応については、先頃、志方先生と対談を行なった。「危機は変化する」「危機管理は実務」「危機管理は現場主義」――大変、有意義で刺激的だった。
本書は平成19年7月の講演記録。現代世界の脅威として「中距離核保有による政治戦争(まさに今のイラン、北朝鮮)」「国際テロとの戦争」「多国籍軍による国際秩序を守るための戦争」「常時行われている情報戦争」の4つの戦争を示しつつ、わが国はどう対処すべきか。わが国周辺の危機、各国の動きと意図等をわかりやすく示す。国家安全保障会議、緊急事態基本法、情報管理基本法等をはじめ、国の基本が法的に確立されていないことを明示する。
日米が国益をほぼ同じくするとともに、価値観を共有することが大事であり、そのうえで沖縄の地理的位置がいかに重要か。また核について「持てるけれど持たない」という立場をもっと積極的に前に出せともいう。きわめて率直、わかり易く語ってくれている。
「人を動かすのはロゴス(理論)ではなくパトス(情念)だ」(アリストテレス)
「コメントが凡庸。質問がぱっとしない。――多くの日本人に共通する対話の二大弱点だ。当たり障りのないことしかいえない。ふだんから核心に斬り込もう、本質に迫ろう、という意識で話をしたり聴いたりしていないので鍛えられない」
「対話はおしゃべりではない。脳に汗をかいているかどうかだ」
――理性的に論理的に議論をすることを重んじたギリシャ人。
「二人してともに道行けば、一人が先に気づくもの」(プラトン)として、相手があるからこそ新鮮な発見、気づきがある。
哲学は「人間としてどう生きるかという根源的な問いを考え続けること」であり、考え続けることをやめない姿勢こそ哲学の根幹。思考停止状態に陥ることを古代ギリシャ人は「アポリア」(袋小路にはまってしまう)と呼んだ。思考し続けることが哲学的姿勢であり、それは、価値の順位付けがはっきりして判断がブレない人だ。
対話の哲学、哲学の対話、「ギリシャは哲学によって立つ」ことを解説している。