極北市が財政破綻し、世良が極北市民病院医院長に就任。赤字建て直しのためには、悪評が立とうが、鬼にも、冷たくもならなければならない。救急もやらない。医療への甘え、病んだ社会にメスを入れようと役所やメディアと徹底して戦う世良。
そして一方、極北市からの救急も全て受け、ドクターヘリも駆使して徹底して一人を救い上げることにかける速水。一見、対極に立つように見えるが、二人に共通する激しい絶望、不器用をよしとする孤独、正義感と喧嘩と使命の自覚のなかに潜む驕り。
さすが海堂尊氏。財政破綻、医療の崩壊、ドクターヘリ、救急医療の修羅場、過疎地医療などを担う人々の使命や気概(気負いも)をダイナミックに描いている。
とにかくギリギリの社会と医療と救命の最前線を緊迫感のなかで描くリアリズムと、世良、速水、孤島の診療所で巌として働く久世医師の3人の屹立した姿勢が、迫ってくる。
昨年から今年初めにかけての連載から55の視点としてまとめたもの。題名にあるように「流れ」を語っているのが特徴といえる。
「素人は為替レートを名目で見る。プロは実質レートで見る」「円高のときこそ、海外投資など円高時代にしかできないことをやっておくべきだ」「LCCによって日本の空の活性化を」「成田は仁川に勝るハブ空港になれる」「中所得国の罠」「チリの鉱山で働く日本人から学んだこと 海外投資の中身が変わりつつある」「貿易収支が赤字 より意識すべきは経常収支」――。
日本に必要なこととして、大胆な社会保障改革、消費税上げ、TPP参加、専業農家に支援を集中する農業政策、若者の雇用を確保する雇用制度改革、技術革新を促す研究開発投資などを繰り返し語っているが、要は「政治家が実行できるかどうかだ」という。
東日本大震災のような大きな地殻変動の発生を、なぜとらえられなかったのか。前兆がなぜとらえられなかったのか。震災の予知に対して、国をあげての取り組みを強化すべきではないか。
木村さんはずっと、この地震予知に独自の方法で迫り、主張してきた。木村メソッドの地震予知だ。
「地震空白域」「地震の目」「地震の発生メカニズム」だ。そして「地震と火山の噴火は密接に関係している」と言っている。本書でも「最も警戒すべきは首都圏北東部、つまり千葉県北東部とその沖合いで、2012±3年(M6.7)」と指摘する。そして「地震の目がないから東海地震はこない」「東海地震がこなければこないほど、プレートのプレッシャーがマグマ溜まりにかかるから、富士山が噴火する可能性は高い」という。
地震の観測にとどまる地震調査研究ではなく、予知・予測に挑戦せよ。地震学も火山学も地質学も、全てを総動員して地震の予知に挑戦せよという木村さんの叫びは大事だ。
生活保護の受給者が昨年11月、205万人に及び、この3年間で40万人増えて、過去最高となった。しかもその支給額3兆3000億円。2009年2月までは、65歳以上の高齢者、病気や精神疾患のある人、母子家庭に限られており、厳しい運用だったが、2009年3月18日の厚労省通達で、「働く世代」を生活保護に受け入れることを実質的に認めた。この通知が転機となったという。働ける世代が、大量に生活保護になだれ込んだ。
転職しようとしても何度も何度もハネられる。就職しても過酷で、自信も喪失する。無気力になる。生活保護を受ける。しかもそこに貧困ビジネスが突け込む。受給者は就労意欲をますますなくす。生活そのものが乱れていく。生活保護から抜け出せない。抜け出そうとしない。
大阪市と貧困ビジネス業の戦いが生々しく語られる。第二のセーフティーネットの柱、「訓練・生活支援給付」が就労に結びつかない。もう一つの柱、「総合支援賃金貸付」は返済できなくなる。回収は進まない。加えてこうしたこと自体が、貧困ビジネス業者の新たな標的になる。
現実には貧困層の3分の1しか受給していない生活保護。自立するインセンティブをより制度の中に抜本的に組み入れなければならない(鈴木旦氏は「保護を打ち切る期限を設ける」「ある種の蓄財を認め凍結預金口座をつくる」「最低賃金の引き下げで職を確保する」などと述べる)。矛盾は誰しも指摘するが、現場の実態を知らなければ、対応はできないことは確かだ。