ライアの祈り.jpg

13,000年前から2300年前くらいの1万年以上も続いた縄文時代――。きれいな水と空気、大地から実をとり、狩りをする。食べ物も豊富にあって、天変地異が起こらず、他人と仲良く暮らすことを願った縄文人。人は、自然と対決では勿論なく、共生というよりも、自然に抱かれて生きてきたようだ。ゆったりとした時空のなかで、人は自然の声を聞き、人の心に敏感。本書には「泣く」「祈る」「人と自然との交流」が、文明の夾雑物を一切排除して描かれる。全ての過剰を除去したシンプル、原点、原風景の心持良さだ。


ライアの"ラ"は「五」を意味する。天・地・火・水・神。この世の全てを表わす。"イ"は「朗らか」、"ア"は「結ばれる」――。縄文時代のライアと、現代の大森桃子が結びついて主人公となる。縄文の魅力とロマンが感動的に流れ出る。


森沢明夫さんの「津軽百年食堂」「青森ドロップキッカーズ」に続く青森三部作。鈴木杏樹主演で映画化され、近く公開される。楽しみだ。



マクドナルド失敗の本質.jpg
全盛を誇った日本マクドナルドが苦戦していることを分析・レポートしている。マクドナルドを日本化しようとした藤田田氏(1971年~2003年)と、米国式経営を志向した原田泳幸氏の経営(2004年)だが、不思議にもほぼ同じような結果、一致をもたらしている――それを分析している。


1993年、バブル崩壊後の消費低迷で売り上げが急減したことに対し、ディスカウント路線と店舗拡大戦略で対応した藤田氏。ブランドイメージが低下したところにBSE問題(2001年)が追い討ちをかけた。米国式経営を持ち込み新商品をヒットさせた原田氏だが、商品の値頃感の失墜やほかの外食チェーンやコンビニに顧客を奪われていく。マクドナルドの経営理念(QSC+V)(品質Q、サービスS、清潔度C+お値打ち感V)、サービスのトライアングル(企業・従業員・顧客の満足、感動と満足の三角形)は現場の人間の努力があって成立するものだが、それが崩れてきた。また、イノベーションの不足もめだつと指摘する。


欧米人が19世紀から20世紀にかけて発明した最強の3つのビジネスモデル。百貨店、食品スーパー、FCシステムはいずれも、苦戦を強いられている。変化激しい社会、構造的な変化のなかで、定見を保持、鍛えつつ、短期的収益だけにとらわれない経営は至難のことだと思われるが、あらゆる組織が問われていることだ。真正面から問いかけられた思いだ。


<凡庸>という悪魔藤井聡著.jpg

21世紀の全体主義――問題意識は同じだ。「思考停止」が「凡庸」な人々を生み出し、巨大な悪魔「全体主義」を生む。1951年、ハンナ・アーレントの「全体主義の起原」は「反ユダヤ主義」「帝国主義」「全体主義」の三部から成る。そして大衆の出現なくして全体主義は成立することはなかったと指摘する。フランクフルト学派、ホイジンガ、フロム、オルテガ等々、私の20代は大衆社会化状況のなかで全体の中への個の埋没現象、ファシズム論を学び、書き、語ったが、今はない。事態は逆にそこまで進んでいるといってよい。


藤井さんは、21世紀の「凡庸」という大罪、思考停止の病理を具体的に示す。「いじめ」「リセット願望」「俗情に結びつく構造改革」「米経済界を席巻した新自由主義」「グローバリズム全体主義」「大衆迎合的プロパガンダの横行」「全体主義的テロル」・・・・・・。そして、人間は人間である以上、思考停止してはならない責務があるという。



売れる会社のすごい仕組み.JPG
「明日から使えるマーケティング戦略」として、ハイレベルのマーケティング戦略を平易に体系的に解説してくれる。


売れる仕組みは「せ・す・じ・評価(戦略→数字→実行→評価)」の全社的プロセスで、それを作ることが経営者としての最優先事項だ。戦略がない者は社長失格であり、このプロセスを全社員が共有する。強い「想い」をリーダーがもち、それを共有することが重要となる。


本書では「戦略的BASiCS(「戦略・競合」「独自資源」「強み・差別化」「顧客ターゲット」そして「メッセージ」)」「売上5原則(新規顧客の獲得、既存顧客の維持、購買頻度の向上、購買点数の増加、商品単価の向上)」「マインドフロー(客のココロの流れ)」「プロダクトフロー」を売れる仕組みを作るツールとして示す。


徹底した分析のもとに戦略が立てられ、成功への道が開かれることを感ずる。


ドクターハック中田整一.jpg

日本を愛したスパイ、ドクター・ハックことフリードリッヒ・ハック。副題には「日本の運命を二度にぎった男」とあるが、ひとつは日本を悲惨な戦争に導いた日独伊三国同盟(1940年4月27日)に至る契機となった1936年(昭和11年)11月25日締結の日独防共協定にかかわったこと。ヒトラーのファシズム国家ドイツと軍国主義の日本が協力してソビエトの共産主義の進出に対抗しようとした条約だ。そしてもうひとつは、「日本を戦争から救い出す」ための和平工作(藤村・ダレス工作とヤコブソン工作)だ。


ヒトラー側近のリッベントロップ、日本陸軍駐独武官・大島浩、リヒャルト・ゾルゲ、酒井直衛、藤村義郎、アレン・ダレス、ゲーロー・フォン・ゲヴェールニッツ、そしてアーノルド・ファンク監督と原節子・・・・・・。緊迫した世界のなかで、日本とナチスを結び付けた十字架を背負いつつ、反ナチに立ち上がり「日米開戦不可を警告」日本に早期の和平を説いたドクター・ハックの人間像と時代の舞台裏が浮き彫りにされる。より鮮明にされるのは戦争末期の軍人・官僚の世界からの孤立と、情報遮断、そして思考停止だ。本書が今、出版されたということはそれは過去の話ではないという指摘だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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