火花.jpg

人気お笑いコンビ「ピース」の又吉さんの話題の純文学作品。主人公の「僕」・徳永は熱海の花火大会で、天才肌の先輩芸人・神谷に会い、師弟関係を結ぶ。同世代の芸人が売れていっても、なかなか芽が出ない。


「漫才師である以上・・・・・・あらゆる日常の行動は全て漫才のためにあんねん。だからお前の行動の全ては既に漫才の一部やねん。・・・・・・漫才は、偽りのない純正の人間の姿を晒すもんやねん」・・・・・・。神谷の日常は、それゆえ真っすぐで、ハチャメチャ、破滅的でもある。都会とメディアの喧騒のなかで、笑い、面白さを追い求める二人の日常は、常軌を逸する脱輪状況のまま無常世界を往復し、泣き、笑い、もの悲しさを伴なう時間を刻む。


笑いと逸脱、敗れもする人生、青春の直球・・・・・・。今もこうした世界と若者が残っていることを感じながら読んだ。


シャボン玉日本.jpg

久し振りに野坂さんの肉声を聞いた思いだ。戦後70年、あの戦争、20年6月5日に焼け出された野坂さんと妹。「神戸が焼かれ、家族が死んだ6月5日が近づくと憂鬱になる」。飢えと深い闇、「他のことは忘れても、あの深い闇は昨日のことのように、ぼくにのしかかる。戦争をしょうがなかったではどうしても済まされない」・・・・・・。原点、原像はあまりにもくっきりとしている。豊かさとともに、自然は荒廃し、社会は浅薄になっている。いったん突き進み出すと止まらない風潮の日本。惰性で、思考停止の日本。そして、「大人の幼児化が目立つ。若者の老人化も同様」「ぼくらは戦後の歪みを背負っている。67年かけて出来た歪み、またこの数年のうちに生じた歪み、歪みは放置していても治らない」「あのテロ(9・11)は世界を変えたと言われる。・・・・・・国家対国家の場合は、会話が成立する」「(豊かさへの邁進)(使い捨て社会)成長だけを考え、便利さを望み、やっつけ仕事の積み重ねが負の財産として現在を押しひしいでいる」「昔、たまに目にする老人には威厳、風格、貫録のようなものが備わっていたように思う。・・・・・・威厳のあるおじいさんもいなくなった」「戦前、また戦後しばらくは、主に町内のガキ大将がうまく取り成した。さらに弱い者をいじめる行為は男として恥。・・・・・・ガキ大将の育つ環境は、もはや無い(豊かさが生んだ殺風景)」・・・・・・。


若者に、日本に、自ら全力で生きてきた人生観から、痛烈で切れ味鋭い二枚蹴りを決めている。


データの見えざる手.jpg

「ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」と副題にある。矢野さんは、日立製作所中央研究所の主管研究長。24時間、人に装着するリストバンド型のウエアラブルセンサで人間の行動を記録する。そこで得られた100万人日以上の膨大なデータ、人間行動の研究が、人間や社会に普遍的に見られる「法則」や「方程式」を明らかにする。


アダム・スミスの「見えざる手」は、いまやビッグデータを活用して「データの見えざる手」により、社会に豊かさを生み出す。ビッグデータとコンピュータが、さまざまな要因間の複雑な依存関係の全体を見渡しているからこそ可能となることであり、人の「共感」や「ハピネス」の向上をより鮮明にできる。そして対立すると考えられがちな「経済性の追求」と「人間らしい充実感の追求」の両者を結びつける――このように矢野さんは新たな地平を開示する。ビッグデータによってサービス、科学、技術が未来社会に向けて協創する社会が始まるということだ。


日々の効率的な時間の使い方から「ハピネス(幸福)」や「運」ということまで、新たな視座が生まれてくる。たとえば、「運は人の出会いによってもたらされる」「運と出会いを理論化・モデル化する」などを示し、「運も実力のうち」から「運こそ実力そのもの」へ、という。「運」を宗教・哲学・人生論とは別の世界から解明している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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