
久し振りに野坂さんの肉声を聞いた思いだ。戦後70年、あの戦争、20年6月5日に焼け出された野坂さんと妹。「神戸が焼かれ、家族が死んだ6月5日が近づくと憂鬱になる」。飢えと深い闇、「他のことは忘れても、あの深い闇は昨日のことのように、ぼくにのしかかる。戦争をしょうがなかったではどうしても済まされない」・・・・・・。原点、原像はあまりにもくっきりとしている。豊かさとともに、自然は荒廃し、社会は浅薄になっている。いったん突き進み出すと止まらない風潮の日本。惰性で、思考停止の日本。そして、「大人の幼児化が目立つ。若者の老人化も同様」「ぼくらは戦後の歪みを背負っている。67年かけて出来た歪み、またこの数年のうちに生じた歪み、歪みは放置していても治らない」「あのテロ(9・11)は世界を変えたと言われる。・・・・・・国家対国家の場合は、会話が成立する」「(豊かさへの邁進)(使い捨て社会)成長だけを考え、便利さを望み、やっつけ仕事の積み重ねが負の財産として現在を押しひしいでいる」「昔、たまに目にする老人には威厳、風格、貫録のようなものが備わっていたように思う。・・・・・・威厳のあるおじいさんもいなくなった」「戦前、また戦後しばらくは、主に町内のガキ大将がうまく取り成した。さらに弱い者をいじめる行為は男として恥。・・・・・・ガキ大将の育つ環境は、もはや無い(豊かさが生んだ殺風景)」・・・・・・。
若者に、日本に、自ら全力で生きてきた人生観から、痛烈で切れ味鋭い二枚蹴りを決めている。