21世紀 地政学入門.jpg月刊「文藝春秋」に毎月、連載している「新世界地政学」の2011年7月号から2016年2月号までのうち51本を選んだもの。

今年も世界の政治・経済の変動は激しく、大きく波立つなかでの日本丸の舵取りはきわめて重要。「地理や歴史、民族や宗教、人口や気候(温暖化)が世界政治を動かす要素としてこれまで以上に重要」となっている。金融・株式市場も、観光も、ロボットやドローン等の科学技術も、ICTやIoTも、世界を舞台として激変する毎日だ。

日本が戦略的な「駒」として利用され、翻弄されないように「地政学的直視力を身につけよ」という。「米国の衰退と今年の大統領選(本書の2012年大統領選の分析は的確)」「2050年のアジアでは日本は人口列強G7に入っていない」「中国の台頭と中国の夢」「日本の危機と組織文化(危機対応の際の最大の敵は、悲観主義、敗北主義)(メード・インサイド・ジャパン)」「『新たな中道保守』を構築せよ」「未来地政学2030」「静かな抑止力」・・・・・・。日本のとるべき選択を浮き彫りにする。


チンパンジーは365日ベッドを作る.jpg「眠りの人類進化論」と副題にある。座馬さんは野生チンパンジーの睡眠を調査している研究者。人間の眠りを明らかにする。そのためには霊長類の睡眠にまで広げて研究し、人類の睡眠の普遍性を考えるということだ。

チンパンジーは毎日、木の上にベッドをつくって眠る。そして次の日には移動してまたベッドをつくって眠る。ベッドは、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、ヒトの「共通祖先」が作り出したようだが、進化の過程で、オランウータンはベッドの上に屋根を作り、ゴリラは地上にベッドを作る。チンパンジーの作った木の上のベッドが「寝てみたら快適だった!」ということから、作る場所、構造、寝姿、群れとの関係、外敵との戦い、睡眠の深さと長さ、産業革命前は1晩で2回眠っていた人間(夜に排泄で起きるのはチンパンジーも同じ)、枕や畳の意味など研究が続けられる。

チンパンジーに「何故」と聞いてみたくなる。


劉邦上.jpg劉邦中.jpg劉邦下.jpg「劉邦には超人的な武威も徳もなかったにもかかわらず、項羽を倒して、天下を取った。このふしぎさを合理のなかにすえなおせば、個の人ではなく、集団の力がそうさせたというしかない。あるいは主と従がたがいに成長する相乗効果があったかもしれない」と、宮城谷さんは"あとがき"に書いている。

私が心している言葉に「民之所欲 天必従之」がある。本書には天命は民の心の中にあり、その民にもっとも近いところにいるのが沛公であると思い、従属を願い出た、というくだりがある。天命と人心、天下人の器、戦う人か治める人か、想念のなかに民は存在するか否か、人を得るか否か、表層を知る人か深層を知る人か・・・・・・。

蕭何、張良、陳平、夏侯嬰、曹参、灌嬰、周勃、盧綰、樊噲、周苛、周緤、尹恢、任敖、王吸・・・・・・。劉邦の回りの人の豊かさと志には目を瞠る。天下をめぐる項羽と劉邦の決戦、楚漢戦争は、鴻門の会、垓下の戦いで終結する。


これから始まる「新しい世界経済」の教科書.jpgスティグリッツ教授の主張はきわめて明確だ。いま、世界経済は混乱と衰退へと向かいつつある。世界をリードしてきたアメリカは、1パーセントの裕福な人々と99パーセントの残りの人々の格差が広がっている。最上層の人々は、株価が上昇したおかけで、金融危機で失ったものをすっかり取り戻したが、なけなしの財産をすべて失ってしまった残りの人々はそうはいかなかった。中流層の生活を送ること、あるいは維持することが徐々に手に届かなくなっている。アメリカンドリーム――それは全ての者が最上層になりうる社会であったはずだが、いまや貧富の差は固定化してしまっている。それは、政府が選んだ政策の結果であり、経済ルールを書き換えることが解決策だ――。スティグリッツ教授は、その新しい道筋を示す。

「不平等な経済システムをくつがえす」「市場支配力のゆがんだ影響」「金融セクターの拡大」「最富裕層にのみ奉仕する経済」「なぜ賃金は低いままなのか」「最上層をいかに制御するか」「税制を改革する」「短期主義を打ち破る」「中間層を成長させる」「完全雇用を目標にする」「大規模なインフラ再構築を」「最低賃金を引き上げる」「保育対策の経済効果」「幼児期教育に投資する」・・・・・・。指摘する項目は社会全般にわたる。そして平等と繁栄が両立する経済を提案している。


伝書鳩  黒岩比佐子.jpg鳩の能力は凄いものがあり、その驚くべき帰巣本能を人間は利用して「軍用鳩」「伝書鳩」として使ってきた。鳩は留鳥であって、渡り鳥ではない。「視覚」「太陽」「磁気」「臭覚」などを手がかりにして帰巣する。今は「レース鳩」の時代。それどころか、ドバトが"鳩フン公害"として都市の嫌われ者になっている。

丹念な取材にも頭が下がるが、「書き終えてみると、これは『切ない物語』だという気がした。・・・・・・鳩は飼い主に対する忠誠心や、与えられた任務への義務感からではなく、引き離された家族に会いたい、巣に帰りたいという一心で、命がけで数百キロ離れた場所からでも戻ってくる。人間はその鳩を戦争の英雄に祭り上げたり、人命救助に貢献したと称して表彰したのである」と黒岩さんは語っている。愛鳩家の心にも迫っている16年前に発刊された著書。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。前国土交通大臣、前水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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