わあが心のジェニファー.jpgニューヨーク育ち、父母の離婚で米海軍大将の祖父に厳しく育てられた青年・ローレンス・クラーク。恋人のジェニファー・テーラーに告白しようとしたところ、日本びいきの彼女は「プロポーズの前に、日本を見てきてほしい。ひとりでゆっくりと」という。

成田に降り立った瞬間から、見るのと聞くとは大違い。「日本はハワイの先にあるのではなく、固有の文明を持つ遥かな異国だった」と、カルチャーショックを受けるとともに、父母と離れて育った人生をも振り返り思考する時間をもつ。現在急増しているインバウンドの日本再発見小説ともなっている。東京、京都、大阪、別府、そして銀座から丹頂鶴の舞う釧路へ・・・・・・。

アメリカ人のいう「ネバー・ルック・バック ゴー・アヘッド(けっして振り返るな、前へ進め)」。しかし祖父はいう。「ブリッジに立っていても、船がまっすぐ進んでいるかどうかはわからない。常に航跡を振り返れ」と。そして、彼がなぜ日本に共感するのか。心奥に日本の社会と文化の共鳴盤をもつ出生の秘密にたどりつく。そして絶滅寸前であった丹頂鶴を100年間にわたって育て続けてきた善行の背後に「自然は目に見える神だということ。施すのではなく、仕えるのだということ。過不足のない平等、それこそが真実の愛」という依正不二の生命観の世界があることを静かに示す。


終わった人.jpg定年後の人生は長い。「悠々自適」「好きなことに時間をかける。趣味に、旅行に」「ゆっくり夫婦で」などというのは恐らく3カ月だけ。多くの人は「やり切った。会社人生に思い残すことはない」などという感覚をおそらくもたない。内館さんは「成仏してない」という。もう一回挑戦したいと思っても、社会は「終わった人」と見る。着地点に至るまでの人生が恵まれていても「かえって"横一列"を受け入れられない不幸もある」のだ。

「年齢や能力の衰えを泰然と受け入れることこそ人間の品格」「重要なのは品格のある衰退(坂本義和)」というが、人生も街づくり(コンパクトシティ)も「上手に縮む」のは簡単ではない。「思い出と戦っても勝てねンだよ」とはプロレスラーの武藤敬司さんの名言で、本書でも何度も出てくる。たしかに定年後、美化された思い出ばかりと格闘しがちになろう。

「介護」「認知症」「下流老人」・・・・・・。これも深刻だが、元気な高齢者の居場所、孤独、暴走老人も大きな問題だ。全ての人に定年が来る。秋が来る。そして今やなかなか死が来ない。そして生老病死の人生の着地点は大差がないものだ。内館さんのこの小説で、様々なことを360度にわたって考えさせられた。


昭和史の10大事件.jpg異色の対談だが、いい語らいが続く。驚愕の事件そのものを取り上げているというより、その事件を生み出した社会的背景を述べている。生の言葉で語られるがゆえに、説得力をもつ。

10大事件は「昭和金融恐慌」「2.26事件」「大政翼賛会と三国同盟」「東京裁判と戦後改革」「憲法第9条」「日本初のヌードショー」「金閣寺焼失とヘルシンキ・オリンピック挑戦」「第五福竜丸事件と『ゴジラ』」「高度経済成長と事件――公害問題・安保騒動・新幹線開業」「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件)」だ。昭和の時代は戦争が傷となり、トラウマとなり、その記憶は癒えず、体験を引きずっている。20年代終わりからは私も明確に覚えている。


下流老人.jpg「一億総老後崩壊の衝撃」と副題にある。今後さらに下流老人(生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者)が大量に生まれ、日本社会に衝撃を与えるが、現在の若者の多くは下流老人と化す。

貧困の問題というと「絶対的貧困」とか「最貧困女子」などが取り上げられるが、「下流老人の問題は、絶対的貧困も含むが、相対的貧困が主体であるため、貧困が見えにくい。相対的貧困は、共同体の大多数と比べて著しく生活水準が低く、必要なものが足りないということだ」といい、この問題を安易に捉えてはならないと指摘する。

下流老人は3つのない――収入が著しく少「ない」、十分な財蓄が「ない」、頼れる人間がい「ない」(社会的孤立)――が特徴だが、「あらゆるセーフティネットを失った状態」と言う。ごく普通のサラリーマンであった人が65歳の時点で「資産(貯金+退職金)」「年金」で暮らそうと思っても、80歳を過ぎるとその資産が底をつく。途中、「病気」になった時(誰しもだが)、その結果は明らかだ。2025年問題というが、団塊の世代が80歳を超えた2030年問題への備えをどうするか。本書は、個人も国も今何をすべきかを、かなりストレートに具体的に踏み込む。


インバウンドの衝撃.jpg外国人観光客が急増している。うれしいことだ。「2000万人になったら日本の景色が変わる」と私は言ってきたが、それはもう目前だ。一昨年、前年の837万人からついに1000万人を突破。さらに昨年は1341万人と飛躍した。そして今年は、1900万人を超える勢いとなっている。観光庁を管轄した私としては在任中に、じつに1000万人増ということになる。

2020年に2000万人達成を目標にしてきたが、今やるべきは「3000万人時代に備える」ことだ。本書では、その動向を把握し、ホテル不足、CIQや多言語対応、無線LANの整備、ムスリム対応、MICEやIRなどにもふれている。急速に動いている時の出版だけに、どの時点のデータかは苦労された点だと思う。観光は日本経済にも、地方創生にも劇的な好影響を与える。影響は多方面にわたる。本書に示された課題と展望をしっかり踏まえて進みたい。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。前国土交通大臣、前水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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