「住宅」一筋に歩んできた竹中宣雄ミサワホーム会長。その人生は凄まじい。「人間いたるところに青山あり」「住宅営業は夜から深夜までは商談のゴールデンタイム(夜訪)」「駅のコンコースに寝て一夜を過ごしたこともあったホームレスもどきの泥臭い住宅営業」「管理職として必要な3つの能力――営業推進力、行動計画、受注残管理」「毎朝ミーティングが昼の1時、2時まで」「ついたあだ名がマムシ」「転職人生」「自動車事故で全身骨折、大量輸血でC型肝炎に」「走れ! Do Runを座右の銘に」「ミサワホーム経営危機、産業再生機構の支援」「敗者の惨めさ、火中の栗?」・・・・・・。しかしこれは単なる自伝の書ではない。激動する時代の変化の最前線で、人間生活の基盤であり根源である「住宅」は、それを映し出す鏡であり、「住宅(営業)」を語ることは時代と社会そのものを語ることであるからだ。その課題を打開していく先駆的役割りを住宅産業が担うという重要な意味をもつ。
「これからの住宅産業のカタチ」――。これからの時代と社会の変化をどう見るか。豊かな住生活を築くことが時代を切り拓くことになることを、俯瞰的に時間軸をもって語っている。その苦闘を「住宅という仕事の醍醐味」とポジティブに言うのが心地よい。
変容する不動産市場と住宅の「質」――。「人口減、少子高齢化」「都市回帰」「災害に強い耐震・免震」「南極の断熱、耐風、耐震、軽量化したミサワのプレハブ住宅・木質パネル接着工法」「ゼロ・エネルギー住宅」「二世帯住宅はひとつ屋根の下の近居」・・・・・・。更に「既存住宅流動市場の拡大」「空き家の抑制と活用」「外国人労働者も住宅確保要配慮者に」「長期優良住宅の促進と集合住宅の課題」「増え続ける"とりあえず空き家"」「二地域居住に空き家の活用」「環境時代にZEHの普及」「スマートハウスからスマートシティーへ」「太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)の連結」「未来志向の複合拠点『ASMACI』モデル」「DX、テレワーク時代の住宅」・・・・・・。これからの時代変化の"見える化"は、住宅・都市づくりにあることを想起させる。
珍百景にもあげられる京都錦小路の錦天満宮の鳥居。参道の両脇ギリギリにビルが建てられ、なんと鳥居の両端がビルにめり込んでいる。その鳥居が刺さる建物で密室殺人事件が起きる。
時は東京オリンピックが終わった39年の暮れ、クリスマスの朝。鳥居脇の1階で半井肇の妻・澄子が絞殺され、肇は早朝、京阪電鉄の始発に飛び込み自殺をする。鳥居がめり込んでいる2階には8歳の娘・楓が寝ており、枕元にはサンタクロースからの贈り物が置いてあった。夢にまでみた初めてのサンタからの贈り物と両親の死の悪夢。楓をとても可愛がってくれていた父の鋳物工場で働いていた国松信二が殺人犯として逮捕された。しかし、完全な密室。2階にはクレセント錠、1階にはスクリュー錠がしっかりかかっていた。誰も入れないはずの完全な密室に、サンタクロースと殺人犯、天使と悪魔が入ってきたというわけだ。
この謎に登場する御手洗潔。事件周辺に、不眠に悩まされたり、小さな物が朝動いているという不思議な現象が起きていることを知り、物体の「固有振動」と「共振」現象にたどりつく。私が京大土木工学科で、卒論・修論で取り上げた振動論だ。これが出てくるとは思わなかった。このミステリーは単なるトリックの謎解きでは終わらない。逮捕された国松の生い立ちと人生、楓の両親や育ての親、そして国松への思いなど、まさに人間ドラマが交錯する。「科学と人間」がミステリーのなかで包み込まれる感動傑作。