「日本型格差社会」からの脱却.jpg1990年代以降の日本。進む少子高齢・人口減少社会、成長率の低下、雇用の悪化、非正規社員の増加、生活保護の増大、ワーキングプアの厳しい現実、子どもの貧困の連鎖、中間層の脱落・・・・・・。格差が広がっていることが指摘される。しかし、「日本型格差社会」と岩田さんが言うように、その根源は日本のデフレである。「こうした経済環境の悪化をもたらしたのは、90年代以降、アベノミクスが始まるまでの日銀の金融政策がもたらした長期にわたるデフレと、デフレ脱却に本格的に取り組み始めて、1年しかたっていない時期に実施した消費増税を筆頭とする緊縮財政である」「格差を縮小し、少子化を止める正攻法の政策は、財政政策と金融政策が協調して、デフレから脱却することである」という。そのうえで、「デフレから完全に脱却し、生産性が向上するように、供給者保護政策から公正な競争政策に転換し、規制と税制を改革して、一人当たりの成長率を高めることである」と言い、具体的改革案を提示する。

「90年代以降、日本の生産性はなぜ低下したか――人手不足経済が成長の土台となる。OECDやアトキンソン氏が"日本の労働生産性は国際的に見て極めて低い"などといっているのは、労働生産性の分子の実質GDPは総供給と総需要で決まり、景気の変動でコロコロ変わることを認識していない。景気という鏡に映った数字上の労働生産性は景気の良し悪しによる実質GDPを比較しているにすぎない。真の労働生産性に最も影響する要因は技術進歩であり、全要素生産性(TFP)だ。アトキンソン氏が経営者を"無能"呼ばわりするのは過ちで、デフレでもたらされた最悪の経済環境こそ直すべきだ。日本のデフレは人口減少や高齢化の上昇によってでなく、日銀の金融引き締めによるマネーストック増加率の急低下である」・・・・・・。デフレ基調を変え、人手不足経済にならないと、「GDPは資本、生産性、労働力」といっても働かない。デフレ脱却政策を進めつつ、ミクロ政策による生産性向上策をとるということだ。

そして「一人当たりの生産性、GDPを引き上げるには、公正な競争政策を導入し、女性の労働参加率を引き上げる」「日本の所得再分配政策は、社会保障による高齢者への再分配に偏っており、税による所得再分配が弱い。資本所得課税に累進性を」「正規、非正規の区別をなくし、労働市場の流動化を」「職業訓練制度や就業支援制度を取り入れた積極的労働市場政策に転換を」「所得再分配政策を中小企業や農業などの特定の集団を保護するのではなく個人単位の所得再分配に」「切れ目のないセーフティネット整備のために、負の所得税方式の給付付き累進課税制度の導入を」「年金は修正賦課方式から積立方式に」などを提唱している。

デフレ脱却をめざし、アベノミクスを進め、金融政策とともに、財政政策。インフラのストック効果を強く進めた私として、この数年を改めて想起した。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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