「2020年末に登場したファイザー製とモデルナ製のmRNAワクチンは、感染流行の反復という悪い流れを断ち切る、いわばゲームチェンジャーとなりつつある。ともに約95%という発症予防効果を持ち、重症化予防効果、感染予防効果という、いわゆる『三本の矢』が揃った、見事なワクチンだ。これによってワクチン接種で集団免疫を達成できる見込みが出てきた」「感染抑制は、①人流の抑制②ワクチン③治療薬の3つが大切だが、ワクチンと効率的に重症化や死亡を防ぐモノクローナル抗体という2つの『武器』を手に入れた。収束の方向に持っていける。不安材料は未知の変異株。その発生を防ぐためにも2回のワクチン接種を」という。免疫学者・宮坂昌之氏が、ワクチンに関する最新の知見を科学論文誌や研究機関のデータ、50年の臨床研究を踏まえて示し、本やメディアを通じての"嫌ワクチン"発言を切る。
「新型コロナワクチンは本当に効くのか、安全か」――「2つのワクチンは驚異的な有効率とスピード開発」「2回接種で、B細胞が作る中和抗体だけでなく、NK細胞、T細胞などが活性化され、変異株に対しても効果を発揮する」「副反応は感染ではない。自然免疫機能を強化したり、感染阻害の抗体をつくる免疫応答を誘導するため発生する。副反応と有害事象を区別せよ。副反応は深刻なものではない」「1回と2回が違う会社でも良いか――データがまだない。IgA抗体量、IgG抗体量、B細胞の数でも、組み合わせた方が良いという結果もある」・・・・・・。
「ワクチンの効く仕組み」――。「免疫機構は自然免疫と獲得免疫の二段構えで、順番に働く」「病原体には多数の『抗原』があり、私たちの免疫系は『抗体』を使って自己と非自己を区別する。目印(抗原)に対して作られるのが抗体」「ワクチン接種は自らの免疫系に『免疫記憶』を植え付ける。ワクチンでは、獲得免疫ばかりに焦点が当てられるが、免疫力は自然免疫と獲得免疫の総合力。だから変異株でワクチンが全く効かなくなることはない」。子どもは自然免疫が強く、ウイルス侵入に粘膜面で自然免疫が強く働く。インフルエンザは子どもの方がかかりやすいが、毎年流行するので大人の方がウイルスにさらされた回数(経験)が多く、獲得免疫ができているからかも知れない」「ワクチンは生ワクチン、不活化ワクチンがあるが、mRNAは遺伝情報を与え、ウイルスタンパク質を私たちの細胞に作り出す"新世代ワクチン"」「mRNAワクチンが免疫反応を起こす仕組み」「アストラゼネカ製ワクチンはウイルスベクターワクチン」「イスラエル、英国の今の感染はデルタ株によるもの」「感染放置による集団免疫獲得アプローチは惨憺たる結果(英国、スウェーデン)」・・・・・・。
「コロナの情報リテラシー」――。「マスクは有効。鼻出しは鼻からウイルスを吸い込んでしまう。不織布マスクは最も良い」「ファイザー製、モデルナ製は血中にIgG抗体(体内に侵入したウイルスの排除)とIgA抗体(粘膜表面に分布して、粘膜の局所でのウイルスの防御)の両方が増加する」「コロナコメンテーターには悲観的、負の側面強調、間違い、査読前論文の使用、恣意的解釈など、理解に誤りがある。嫌ワクチン本に注意」「行動制限がなくなるのは2023年以降?」「ゼロから始まった治療薬の開発」「変異株の中には抗体が効きにくい株が出てきているが、複数の抗体をカクテル化していることが功を奏している(ウイルス感染を中和できる)」・・・・・・。