「選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」が副題。データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザインを専門とする成田さん。イエール大学助教授であるとともに企業とも仕事をして、ファッションや広告などのおすすめアルゴリズムを開発している。こうしたアルゴリズムが公共政策領域、教育・医療等にも流れ始めている。AI の急進展、Web 3.0時代から今の選挙や政治、民主主義の状況を見ると、あまりにも異常であり大変化は免れない。その「異常を普通に」するために「民主主義更新のためのサバイバル・マニュアル」を提示する。「無意識データ民主主義の構想」だ。AI時代で中間管理職が整理されたり、税理士などの専門家が縮小を余儀なくされると指摘される。やがてしっかりしたアルゴリズムが出来上がれば、政治家は不要で、政策立案官僚は、淘汰されていく。22世紀まであと80年――。必ずしも荒唐無稽ではなく、むしろそうした方向であることを考えて、今後の選挙や政治を考えることもあり得ることだ。それ以上に、国家・社会の仕組みとテクノロジーの課題を考えるべきであろう。
「無数の民意データ源から意思決定を行うのはアルゴリズム。このアルゴリズムのデザインは、人々の民意データに加え、GDP ・失業率・学力達成度・健康寿命・ウェルビーイングといった成果指標データを組み合わせた目的関数を最適化するように作られる」「無意識民主主義は、①エビデンスに基づく目的発見②エビデンスに基づく政策立案、この2つを足すことになる」「人間政治家は徐々に滅び、市民の熱狂や怒りを受け止めるマスコットとしてネコとかゴキブリになる」というわけだ。また国家という観点から言えば、Web3デジタル国家は、既存の国家や社会から資産家たちが逃げ出していく未来という側面を持つ。タックス・ヘイブンとデモクラシー・ヘイブンだ。
「選挙なしの民主主義は可能だし、実は望ましい」「それが無意識民主主義であり、センサー民主主義、データ民主主義、アルゴリズム民主主義で、22世紀に向けた時間軸で取り組む運動だ」という。
少しだけ付け加えると、「民主主義は参加と責任のシステム」だ。この「参加」というのがまず難しい。そもそも「民意」というが、1人の人間の意見、考えそのものが千変万化、一瞬一瞬変化していくものであること。その統計学的なデータが果たして「民意」といえるものなのか。他国や他者についての考えもゆれ動き、それが社会を構成するという事。国家について言えば、国家統治において危機管理は大事な柱だが、AI ・データ・アルゴリズムがその役を担えるのか・・・・・・。これから50年、100年と、人類は自ら作ったテクノロジーとどう付き合うのか。