「歴史の転換期をめぐって」が副題。コロナ禍、ロシアのウクライナ侵略、日本社会の極端な凋落・・・・・・。破局への予感を秘めた転換の渦中にある今、「考えに考え抜くことが、今ほど必要な時はない」としてニ人が対談する。「人類史レヴェルの移行期」という時代認識のなか、「平成を経て日本はどう変化したのか」と問いかけ、「自分探し」を続けた平成という時代であり、「虚勢を張った自慢(日本はスゴイ)」「幸福への意識が変化(若い人と高齢者の満足度が高く、30代、40代が不幸を感じている傾向が強い)」「中国への嫌悪が高まる」と、希望が枯渇し希望に飢えている時代となっていると指摘する。そしてアメリカのベースボールに、イチローのやり方で切り込んだように、日本的で特殊な考え方と国際的に通用する普遍性とが直結したことをヒントとすべきだ、という。
「世界から取り残される日本」では、三島由紀夫を取り上げ、「あの三島がその三島になった理由」を語り、時代を掘り下げる。さらに「破局を免れるために――環境・コモン・格差」では、斎藤幸平「人新世の資本論」を論じつつ、「分人主義」と「コモン」の関係性と可能性に触れる。また、ロシアのウクライナ侵略をめぐって「国を愛する」を論じる。「手段の正義」と「目的の正義」。普通は愛国主義者と普遍主義者は対立すると考えられるが、「本当に信頼できるのは、愛国主義者であるがゆえに普遍主義者であるような人だと思う」と言う。環境問題、コロナ、ロシアのウクライナ侵略などの世界的課題にさらされている今、国民国家を超えた連帯をどうするか、世界の中で日本がよりよく生きるために、外交努力や相互理解をどうつくるか、「経済的に豊かで、平和を国是としている日本」にどう進むか語り合っている。