rupo.jpg「私が思うに国語力とは、社会と言う荒波に向かって漕ぎ出すのに必要な『心の船』だ。語彙という名の燃料によって、情緒力、想像力、論理的思考力をフル回転させ、適切な方向にコントロールするからこそ大海を渡ることができる。ネットカフェ難民にせよ、ホームレスにせよ、最底辺風俗嬢にせよ、私が取材で出会ったのは、十分な言葉を持たず、自らの心の船を適切に操ることのできない人たちだった。想像し、考え、表現するための言葉を奪われた人々だ」「日本の国力の低下を嘆く声が、国語力の脆弱さと深く関わっているように思えてならないのだ。日本の病理――コミュ障、孤立、炎上、ヘイト、陰謀論など現代を象徴する社会課題は、国語力の弱さなしには説明し得ない」「世界が以前と比べてどれだけ複雑になり、高いコミュニケーション能力が求められるようになっているのか。家庭格差の中で子供たちの内面でどんなことが起きているのか。学校が教育を通して十分な国語力を続けられない原因は何なのか。子供たちを取り巻くネットの言語空間はどのようなものなのか。それらの問題を正確に見つめた上で、家庭での親の接し方、学校のあり方、ネットの使い方を見直す時期に来ているのではないか」――。考える力、感じる力、想像する力、語り合う力、表現する力たる国語力をいかに回復させるか、複雑化しネットなどの情報洪水の中でどう生き抜いていくかのベースになる国語力再生への飽くなき挑戦の迫真のルポだ。

問題となっているのは「家庭環境でのつまずき、家庭格差が言葉の発達を阻害している」「学校が国語力を失わせている。ゆとり教育や社会が求める欲求の肥大化、降り注ぐ新しい指導に翻弄される学校」「ネット、SNS言語の侵略。熊本県インスタいじめ自殺事件で少女を死に追いやった言葉」「19万人の不登校児を救え――フリースクールでの再生」「ゲーム世界から子供を奪還する――ネット依存からの脱却」「非行少年の心に色彩を与える――少年院の言語回復プログラム」「文庫丸ごと一冊の精読で画期的な成果を上げる全人的な教育」「答えのない問いが他者への想像力を鍛える哲学対話」・・・・・・。あきらめることなく挑戦している実例を示す。自然と触れ、ディスカッションをしたり、言葉を使って演じたり、書かせていく。

そしていう。「私は、こうした取り組みは野に芽を出したばかりの植物に、その日の天候に応じて少しずつ水を与えるようなものだと思う。小さな芽が、10年後に樹木となってどんな花を咲かせるのかはわからない。だが、新芽に対してやらなければならないのは、新しい化学肥料を次から次に与えることではなく、将来どんな強い風や激しい雨に襲われても、それに負けない太い根と幹を丹念に育てることだ。そんな木がたくさん根を張る森は決して地滑りを起こしたりはしない」――。丁寧に丁寧に、大事に大事に、樹木や植物を育てるように、それ以上に愛情もって子供を育てる。それはできると石井さんは言う。

 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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