副題は「ナチスの時代を生き延びたユダヤ人と日本人」――。ベルリン在住の作家・六草いちかさんが、あの凄惨な時代を奇跡的に生き延びたユダヤ人と、杉原千畝(リトアニア領事代理)のようにそれを助けた日本人を丹念に取材し調べあげたもの。証言は生々しく、壮絶。「生き延びたのは偶然の積み重ね」「生死を分けた一瞬に自ら死を賭した捨て身の人がいてくれた」「密かにユダヤ人を助けるドイツ人や在独の日本人」・・・・・・。狂気に同調してしまう人間、人間性とは・・・・・・。問いは重く苦しい。
1933年ヒトラー内閣成立、ユダヤ人の公職からの追放、焚書事件、反ユダヤ運動の広がり。1935年ニュルンベルク法制定によってユダヤ人の人権が公然と剥奪。1938年11月の「水晶の夜」事件発生、町全体がユダヤ人憎悪の危険状態に突入。1939年ドイツのポーランド侵攻・第二次世界大戦。1941年ベルリンからの強制収容所行き列車移送開始、ユダヤ人の出国禁止。1942年7月ベルリンからアウシュヴィッツ絶滅収容所行き列車移送開始。1943年2月、ベルリン市内残留ユダヤ人を残らずアウシュヴィッツへ送る「工場作戦」実施(ベルリンからユダヤ人一掃作戦)。1945年4月、ソ連軍のベルリン砲撃。そして5月にドイツ降伏。
ベルリンにはかつて16万人以上のユダヤ人が暮らしていたが、終戦までこの町で生き延びたのはわずか6千人だった。日独が同盟関係にあったなかでユダヤ人を救ったベルリンの日本大使館、古賀守、近衛秀麿、藤村義朗、杉原千畝、毛利誠子・・・・・・。多くの日本人が描かれている。