高橋源一郎さんの「さようなら、ギャングたち」は1981年だというから、もう30年。注目していた。内田樹さんは、「下流志向」「街場の教育論」「日本辺境論」から「街場のメディア論」まで、かなり読んできた。
し かし、「縮んでいく日本」「静かな日本」「人口の減る日本」「縮みながらも文化的に暮らせて、自尊感情が維持できて、国際社会の中でできる範囲で立派な役 割を果たせる国になれれば、それで上等じゃない? なのに、相変わらず"右肩上がり"だ」――世界に先駆けて、日本が示せるものを、情理を尽くして熱く語る政治家が望まれている、と言う。
昨年12月発刊の書。河田さんは復興構想会議のメンバー。活躍が更に期待されるが、京大土木の1学年後輩にあたるようだ。東日本大震災に襲われ、首都直下、東海・東南海・南海地震に備えなければならない今、「津波」を余すところなく語る本書は必読。
「減災社会を築く」「避難すれば助かる」「それには津波の知識の絶対量を増やす」という河田さんの思いが伝わってくる。
「どこに何があり、何をしているのか」と副題にある。そして原発ばかりが原子力施設ではない!と指摘し、原発から加工・再処理施設、研究炉に至るまで、全てを網羅。原子力の歴史、全データ、全貌を示してくれている。
東日本大震災における東電福島第一原発事故――。緊急停止時における3つの命綱。それは(1)制御棒(2)緊急炉心冷却装置(3)非常用ディーゼル発電機
だが、(3)が稼動せず、冷却系統が機能しない。この重大な事態は、文明自体を、エネルギー政策全体を、更には科学技術と哲学、人生とは、生老病死とはと
いう実存的な問いかけを発している。
事件の影響力が他に比べて格段に大きく、しかも大きさだけでなくその影響力が歴史のなかに影を落としているという事件を七つ。そしてその核となっている人
物。日本にその都度巻き起こる世論の激高。赤穂浪士に象徴される「動機至純論」。生まれる事件は時代とかけ離れたものではなく、しかも事件によってその空
気がふくれあがり、空気を固め、新たな空気をつくり出す。保阪さんは、昭和の七大事件の因と果を端的に示す。見事だ。
政治経済の閉塞感、日本沈没の不安のなかで起きた今回の東日本大震災。人為の事件ではないが、人々の意識は相当変化している。文明自体に、人の生老病死に、哲学的・宗教的に。