koukun.jpg「この世に、香りで万象を知る香君は存在しない。初代の香君さま以外はすべて偽物だ」「私にとって香りは言葉より雄弁です。絶えず香の声が聞こえ、人の声と違って止む事はありません。それを聞き続けていることが、幸君の徴であるというのであれば、私は多分、香君なのでしょう」――。

いったん下限を下げることによって、危機を乗り越えたかに見えたが、「駆除の方法が見つからない以上、本当の危機脱出にはならない」との恐れは払拭できないでいた。そして香君オリエ、アイシャは、マシュウの母の故郷でもある「幽谷ノ民」の地へ向かう。しかし「救いの稲」による希望は無残にも打ち砕かれる。それ以上の凄まじい災厄、バッタの大群に襲われるのだ。稲だけでなく、牧草も野菜も食い尽くすという自然の摂理の無情さだ。全焼却すべきだが、国は果たして維持していけるのか。政治的にも帝国は保持できるかどうか――大変な決断を迫られる。オードセン新皇帝、香君オリエ、マシュウ、アイシャ・・・・・・。

オードセンを前にしてのアイシャの発言、マシュウの発言――まさに立正安国、国主諫暁のごとしだ。

「私は、天と地と人々の前に、何の掛け値もない自分として、たたねばならない」――。壮大なファンタジーであるが、人間と自然、自然界の連鎖、国家の危機管理、神と幻想、文明の進歩と逆襲など、根源的問題を提起し、コロナ禍をも想起させる類例の」ない作品。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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