昭和3年、1年半ほど断筆した江戸川乱歩が、「陰獣」で戻ってきた。「猟奇耽異を過剰に描き、大衆の低俗な好奇心を刺激するばかりの似非乱歩風作品が増殖し、読者の知的興味に訴える文芸の高級なジャンルとしての探偵小説不在を嘆く批評も目につくようになった。不健全派の旗頭と言われ、文芸を頽廃させる悪の根源のように思われては、くさるのも無理はない(風間賢二)」というなかでの江戸川乱歩の再登場だ。「意表をついた犯人像を描いた変格探偵小説して、昭和初期エログロ・ナンセンス隆盛への誘い水となった(風間賢二)」という時代を背景にし、時代を画する作品になった。

探偵小説作家・寒川が主人公で、美貌の人妻・小山田静子と知り合い文通を始める。ところがその静子に恐ろしい脅迫の手紙が次々と届けられる。まずは夫である小山田六郎を殺すという。脅迫してくるのは変格小説作家・大江春泥。じつはこの男は、ずっと若き頃から静子に恨みを持っていた平田一郎。そして、寒川と静子はドロドロした恋仲となり、寒川は大江を探すが全く手がかりがない。そんななか、小山田六郎変死事件が起きる。心の中を覗くようなじっくり読ませる小説だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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