kurigayu.jpg深川の駕籠舁き、江戸を疾駆する疾風駕籠の新太郎と尚平のコンビ。新太郎と同じ木兵衛店の店子である桶職人の鉄蔵が「俺はもうもたねえ」「幾日ももたねえのは、おれが一番わかっている」「おれの蓄えをそっくり遣って、死ぬ前に茶碗半分でもいいからクリ粥を食べたい」という。天明8年11月、もう寒くなっていて、クリの季節はとうに過ぎている。新太郎らは、懸命に走り回る。いろんな嫌がらせにも合うが、まさに「運は人の連鎖」――。まっすぐで、人の頼みとあれば何でもやる。一筋の新太郎らは、次々に助けを得て、ついにクリを獲得する。

立派に葬式を終えるが、真面目な仕事ぶり、寡黙ながら人柄の良い鉄蔵は、54両もの慶長小判を残しており、新太郎と尚平に渡すとの遺言を木兵衛に託していた。何に遣うか・・・・・・。木兵衛店の横にある小さな空き地に桜の木を植えようとすることになる。ここでも2つも3つも難関があったが、木兵衛、桜の職人・棟梁の義三、花椿の女将・そめ乃----。多くの人々の腹を決める助力によって実現をみる。

「あの桜は、なおしの桜じゃの。住持のつぶやきに、あの木兵衛が背筋を震わせた。なおし酒を好み、吹上の桜を木兵衛店に呼び込んだ鉄蔵。くじけるな。やり直しができるのが、ひとの生涯」・・・・・・。江戸の街が目の前にあるような、その中での長屋、人情の深いつながりの生活、職人の生真面目さ、何よりも義侠心に厚く頼まれたら断れない(たてひきが強い) ひと、口数は少ないが引き受けた事は命がけでこなし、身体を張ってひとのために尽くせる男。「見て呉れだけの男はこの土地には無用だ」という江戸の世界が、なんとも魅力的に描かれる。貧しくとも良い時代というのが、日本には続いてきたのだろうか。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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