rekisito.jpg「日韓問題――対立から対話へ」が副題。本書の思いは「なぜ韓国に謝罪が届かないのか」という問いかけだ。その対立の原因や背景を分析し、関係改善を提言する書。「冷戦崩壊と日韓関係」「元徴用工訴訟問題」「慰安婦問題」「日韓併合・日韓協定」「歴史との向き合い方」の5章からなる。

この30年、韓国では「加害者」日本は何ら謝罪も補償もないという声が勢いを増したという。386世代といわれる民主化闘争世代が1980年代、民衆意識で武装した市民として登場する。「民主化闘争は、多くの市民をリベラル化し、革新・進歩的な様々な価値観の植え付けにも寄与した」「慰安婦問題や元徴用工問題など、歴史認識運動に関わった人々が、意見の異なる人を『歴史修正主義者』『反歴史的』として非難。その力が極大化したのが日韓合意をめぐる反対運動だった」「(過去に関して)謝罪も補償もしない責任逃れの日本というイメージが1990年代以降、韓国の人々の間に定着してしまった。様々な研究・認識が生産され、日韓併合不法論などの解釈が、メディアなどを通して拡散・定着してきたことこそが、韓国の現在の対日認識や自己認識を作った」「1965年の日韓基本条約を不十分なものだとする認識も、古くからのものではない。社会全体の認識として広く定着したのはやはり1990年代以降のことといっていい」「そうした1990年代以降の『時代の推移』こそが現在の対立と葛藤を生み出してもいる」と言う。

2018年のいわゆる元徴用工判決は、1990年代に本格化した日韓併合不法論や日韓基本条約不十分論に基づいている。新日鉄住金に命じているのが未払い賃金ではなく『慰謝料』の支払いである理由も、こうした1990年代の認識にある(すれ違う日韓の意識)」「企業を被告とするものだが、徴用とは明らかに日本『国家』が主導したものである」「危険な炭鉱が朝鮮人徴用者の作業場だった」。日本は「慰安婦問題も含め、日韓間の財産・請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で完全かつ最終的に解決済み」「2015年の日韓合意において『最終的かつ不可逆的な解決』が日韓両政府の間で確認されている」としているが、著者は「日本政府が訴訟自体を相手にしなかったため、韓国の人々には単に韓国を無視した傲慢な行為としてのみ映った。日本は一度も謝罪も補償もしていないと思い込んできた人々に、さらなる悪印象を与えたのである」と言う。そして「慰安婦問題は、事態を正確に把握しないまま、国家責任のみを問い、しかもひたすら『法』に依存して問うたため様々な問題が起きた」「被害者中心主義から代弁者中心主義ヘ、事実よりも運動優先となった」「慰安婦問題の政治化が正しい理解を拒ませ、植民地への理解不足が慰安婦問題理解を遅らせた」と指摘する。

そして「和解を成し遂げるために日韓がなすべきこととは」「事実の背後を見ることの大切さ」「日本は平和国家としての歩みを知ってもらう努力を」などを語る。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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