グリーンスパンの存在感が、司令塔の役割を担って世界経済の安定に寄与してきたことはまぎれもない事実だ。グリーンスパンがここで今回の金融危機が「100年に1度か50年に1度の事態」と言い、「危機が解決したときにあらわれてくる世界は、経済という面でみて、私たちが慣れ親しむようになってきた世界とは大きく違っているのではないか」といっていることは、今、世界の識者の枕詞のようになっている。また一方で、彼が政策金利を下げすぎたことが、今回の一因となったとする批判もある。
本書を読むと、現在を予想しながらも、より悪いシナリオとなっていることを感ずる。そのなかで、「陶酔感と恐怖心」というキーワードが出てくる。「信用と景気の拡大局面には陶酔感がゆっくり積み上がっていく」「信用と景気の循環の収縮局面は、恐怖心に動かされる」「市場は事実上、一夜にして陶酔感から恐怖心に振れ、恐怖心は陶酔感よりはるかに強い力をもち、暴落は突然に起こる」という。
だからこそ、途中の制御は難しく、まただからこそ、制御装置を市場の制度のなかに慎重に埋め込むことが必要となる。「市場の規制に反対」という基本に立つグリーンスパンは、今、どう考えているのか。