生活保護受給者は近年、急増。80人に1人、150万人にも及ぶ。一方、全ての人が雇用情勢の厳しさや生活苦、低い年金にさらされ、さらには不正受給者もあり、生活保護世帯への納税者の目は厳しい。地方財政の厳しさもある。
経済的、財政的視点から自立が要請されるが、生活保護受給者になるのは、まさに貧困、病気、教育(親の貧困、低学歴)、低賃金、雇用・失業、非正規労働、低年金など、日本社会の構造的問題の帰結である。たんなる経済・財政の視点のみで生活保護の問題を考えてはならない。社会に参画し、生きがいをもって人と交わるという次元からこの問題を考えないと、社会はつらいものになる。
本田さんは生活保護を、現場を丹念に歩くなかでルポし、問題の深刻さを剔り出している。そして北海道釧路市の地道な活動は、突き放されがちな生活保護受給者を、社会の中に抱きかかえようとする心の政治をみせてくれている。
「貧困をなくす新たな取り組み」という副題だ。