生物学者・福岡伸一さんに、生活の折りおりにふと浮かぶ疑問に答えてもらう、それが本書。面白い。面白いのは社会でも政治でもなく、やはり「人」であり、動物であり、樹木や植物であり、鳥であり、虫等々、そして身体、食事、健康・・・・・・。生きる物自体が不思議であり、面白いということだ。それによって人生は豊かになっているが、その自然の細部を知らないまま毎日を過ごしている。もったいない。面白いのに・・・・・・。
「生命は巧妙な生存戦略や繁殖方法を編み出している」「生命は動的平衡」「自然の均衡」「あらゆることを遺伝子の多目的性から説明すると・・・・・・・無理や議論や作り話になってしまいがちで、生命が本来的にもつ自由度が見失われるのではないか。生命のありようは、しばしば環境に対して中立的であり、ある種の寛容性、許容性を持っていると思う」――遺伝子決定論でない。ハズレたりアブレたりしている現実。だからこそ福岡さんは興味がわき、その興味と面白さが読む者に伝染する。
「お餅のカビは食べても大丈夫?」「スッポンを食べたらコラーゲンで肌がつやつやになるって本当?」――などという日常生活のことに答えてくれている。何気ない生活が、広く豊かにふくらむ。