名もなき毒.jpg「模倣犯」から9年、「楽園」が出たが、「名もなき毒」を読んでみた。宮部みゆきには、ミステリーや時代小説作家の域を超えた深みがあるとして、ファンが多い。その通りだろう。"動機のない"愉快犯や、"理由なき"殺人、猟奇的殺人、無差別的犯罪という、よくわからない事件が多い。難しい社会であり、時代だ。

その根底に「怒り」、いいようのない自分だけが幸せになれない、自分を受け入れてくれぬ社会への鬱積した不満と不安が「怒り」として爆発する。幸せな人が憎い。上から安易に正論をふりかざす人が憎い。そしてそれが社会のいたる所で毒として(土壌汚染の毒が、何かのキッカケで表面に出るように)表面化し、他者も自分自身も切り刻む。農耕的な"お人好し日本"は、いつ頃からか変質している。

それゆえに、怖い社会となっているが、この小説では、その恐ろしい難しい社会を見事に浮き彫りにするとともに、"お人好し"の主人公と元気な"ゴン"ちゃんと、前向きな中小企業社長と、分別と存在感のある義父のポジティブ・グループが登場している。そこに宮部みゆき本の人気がうかがい知れる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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