「文藝春秋」に毎月、連載されたものをまとめたもの。歴史・哲学を踏まえ、しかも現場を見ての確立された視点からの塩野さんの発言は、カミソリというよりオノで真正面から叩ききる強さがある。
イラク戦争から本書は始まるが
「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない」(ユリウス・カエサル)
「危機打開に妙薬はない。ということは人は代えたとしても目ざましい効果は期待できないということである。やらねばならないことはわかっているのだから、当事者が誰になろうと、それをやりつづけるしかないのだ」(「継続は力なり」の項)
「ドイツの敗戦処理を見習えと言ってくるがあれも見習わない方がよい。・・・・・・戦前戦中の悪のすべてをヒットラーとナチにのみ転嫁したこのドイツのやり方は、ドイツ人自身の自己批判能力を衰えさせてしまった」(「負けたくなければ」の項)
――各篇に全てといっていい。考えさせられることが詰まっている。