

そして佐伯老人はこうも言う。「人を見る尺度は30年だと、ある人がぼくに言った。・・・・・・無論、人生には何が起きるかわからない。・・・・・・しか
し、そんなことは恐れるな。30年後の自分を見せてやると決めろ。きみのいまのきれいな心を30年間磨きつづけろ。働いて働いて働き抜け。叱られて叱られ
て叱られつづけろ」と。京都の陶磁器店の主人は「きみがぼくの本物の弟子かどうかは、30年たたないとわからないが、その30年間を、きみはただまっしぐ
らに歩き通せるか。30年間、ひたすらこの師匠につかえることができるか」と言う。柔道における師弟のなかで、「終わりのない修業、訓練、稽
古・・・・・・」が描かれる。「自分で考えてつかんだもの。自分で体験したもの。それ以外は現場では役立たない。・・・・・・場数を踏め。動け。口を動か
すのは体を動かしてからにしろ。数をこなせ。そうすれば、自然に体で覚えていく。体で覚えたものは何にでも応用がきく」とも――。
最後に、小説では珍しく「あとがき」がある。宮本さんの思いだと思うが、本書は人生、哲学そのものの小説だ。
最後に、小説では珍しく「あとがき」がある。宮本さんの思いだと思うが、本書は人生、哲学そのものの小説だ。