「にんげん蚤の市」(清流出版)、「にんげん住所録」(文藝春秋)、「わたしの渡世日記」(文春文庫)を読んだ。無類の読書家、エッセイストとして名高い高峰さん。どれも面白い。一流の人物、一流の世界との交流が、率直に素のまま、こんなこといってしまっていいのかと思う部分もあるほど平気で語られる。興味本位とは全く対極。出てくる人が全てが素顔。"虚像"ともいわれがちな芸能界のなかで、普通でいられる、私は私でいられる強さをもっているから人も素顔で接したのだろう。きわめて奥深い人間の世界の素晴らしさをみせてくれ、心持よい。
「ええカッコシイはやめて、私の恥のありったけをブチまけようと覚悟。思い出すまま、筆の走るままに書き散らした」というが、「私の歩んできた渡世の道は、もっと恥多く、貧しく、そしてみじめだった」という心の沈潜が、それが踏むべき大地となって、自己肯定、いつも肩ひじはらない精一杯さ、前向き、好奇心、温かさ、仕方がないよやることはやらなきゃ――という高峰さんの人格をつくったのだろうか。
人に尽くせば、人に恵まれるよ――人に恵まれるというのは人生で最高なことだと思う。