
6本のスポーツ短編集。「連投(高校野球の神奈川予選)」「インターセプト(アメリカンフットボール)」「失投(やり投の第一人者と若きライバル)」「ペースダウン(箱根駅伝の快走後の初マラソン)」「クラッシャー(怪我に悩まされ続けたラグビーの4年生フォワード)」「右と左(もつれにもつれたプロ野球のシーズン最終戦のマウンドを誰に託するか)」――。
スポーツ選手は勝負に生きているだけに、ある部分においてきわめて神経質だ。しかも、怪我に悩まされ続ける。練習しなければ強くなれないが、怪我はより悪化するのではないかと逡巡する。過度の作られてしまった期待もある。ここで退けば1人取り残されるのではないか。さまざまな恐怖も同居する。そんななかでの攻守が入れ替わるターンオーバーの瞬間が必ず訪れる。
いずれも、あまりにも納得できる短編だが、「自分の力を誇示することしか考えていなかった。そうじゃない。ラグビーは、誰か――チームメートのためにやるものだ。味方を信じて命を預け、たった一つの目的のために心を一つにする。・・・・・・」――ラグビーをやっていた堂場さんの愛着がにじみ出ている。