
「日米戦後史の欺瞞」と副題にある。戦後の日本の基本構造はいつ、どのようにして作られ、そして今日まで続いているのか。そこにある日本と米国との価値観の違いと相克と軋轢と思惑を描き出す。
「戦後レジームの基本は、平和憲法と日米安保体制であり、そのもとでの経済成長路線だ。そして、この基本構造を生み出したのは、占領政策におけるアメリカであり、それを固定化したのはサンフランシスコ講和条約だ」「この"アメリカ的価値"へのほとんど無意識の従属こそが、"戦後レジーム"を根底で支えるものだった」「戦後日本の公式的価値とは何か。あの戦争を侵略戦争と見なし、敗戦を、連合国による日本の軍国主義からの解放と見る。そして占領政策をへて、日本は民主国家、平和国家へと再生したという歴史観・・・・・・。民主主義と平和主義こそが戦後日本が誇りとすべき価値であり、それにまさる価値は存在しない」「そのアメリカ的価値を普遍的なものと受け入れたのが戦後日本の歴史的および思想的構造だった」・・・・・・。
佐伯さんは「非対称的な二重構造」が「無意識の自発的従属」をもたらすことを示し、「何よりもまず、われわれを就縛している戦後レジームの構造を知ること」が大事であるという。根底には「西洋的合理主義」と「日本的精神」の相克があり、両価値に引き裂かれる日本人の姿が、浮き彫りにされる。