「長寿、イノベーション、経済成長」と副題にあるが、きわめて平易に経済の本質を示している。人口減少が進み、財政赤字は拡大し、地方消滅の危機が叫ばれている。そして、経済成長はムリ、望むことではない、ゼロ成長の定常社会論などが提起されるようになっている。吉川さんは、実は人口減少も含めてそれらは、ロバート・マルサス、アダム・スミス、デイビッド・リカード、そしてケインズ以来論じていたことだと指摘する。そして今、日本に蔓延する「人口減少ペシミズム」を排すること。とくに日本の企業がこの「人口減少ペシミズム」を克服することが、カギを握っている。人口減少は大きな問題だが、日本経済の「成長」については「人口減少ペシミズム」が行きすぎている。高齢社会等の社会の変化は、人が安全・安心・豊かに生きるための新しい需要、高い購買力を要請しているではないかと指摘する。
人口と経済――。「先進国の経済成長は、基本的に労働人口ではなく、イノベーションによって生み出されるものだ」「労働生産性の上昇は、労働者の頑張り、やる気、体力ではなく、広い意味での『技術進歩』つまり『イノベーション』、資本蓄積、産業構造の変化によってもたらされる」「需要の飽和に対しては、新しいモノやサービスの誕生、つまり『プロダクト・イノベーション』だ。需要の飽和において、通常は"水と油"と考えられるケインズとシュンペーターの経済学は急接近する。需要の不足によって生まれる不況を、ケインズは政府の公共投資と低金利で克服せよと説いた。シュンペーターは需要の飽和による低成長を乗り切る鍵はイノベーション以外にないと主張した」「経済成長至上主義を説くのではない。・・・・・・経済成長の果実を忘れて"反成長"を安易に説く考え方は危険ですらある」・・・・・・。各国の経済に合った経済成長の方が、ゼロ成長よりはるかに自然だと、説得力をもって説く。