副題は「バルカンルートを行く」だ。欧州各国に押し寄せる大勢の「難民」。内戦が続くシリア、依然として政情が定まらないアフガンやイラク。大勢の難民が、トルコ、ギリシャからマケドニア、セルビア、クロアチア、スロベニアと旧ユーゴスラビアを縦断、オーストリアを経て、ドイツをめざす。ハンガリーが越境防止フェンスでセルビア国境を封鎖(2015.9.14)、クロアチアとの国境でもフェンスで封鎖(2015.10.17)、人道危機を食い止めようという理念はあっても、欧州各国は圧倒的な人波を抱え込めない現実に直面している。その生々しい実情を、坂口記者がドイツをめざすアフガン人一家に寄り添って同行した渾身のルポ。
押し寄せる難民・移民、苦悩する欧州――ともに必死。かつこれは世界に広がる深刻な課題として進行中のものだ。あの穏やかで温かい坂口記者が、なんと厳しく激しい排戦ルポを断行したかと思うとともに、「あとがき」を読んで胸が詰まった。どんな思いで・・・・・・。