9つの短編集。1つ1つが全く角度・色合いも違う。ミステリーもあれば、温かなもの、ジーンとくるものもあるし、コミカルなものもある。短編の面白さを味わう。
最初「正月の決意」――。町長が神社の賽銭箱の前で倒れており、教育長が行方不明。発見者は死を決意していた夫婦。そして・・・・・・。「どうして私たちのような真面目な人間が死ななきゃいけないの?そんなの、絶対に変・・・・・・。私たちも、これからは負けないでもっといい加減に、気楽に、厚かましく生きていきましょう」。
最後は「水晶の数珠」――。父親が息子にかける厳父の愛。こんな形で表現されるのか・・・・・・。
「レンタルベビー」や「サファイヤの奇跡」では、脳や次代の生命科学と人間が愛情をもって提起され、「壊れた時計」「クリスマスミステリ」はまさに謎解きの本格的ミステリー。
「素敵な日本人」という表題とは? 騙し方、騙され方、人生への甘さと、バタくささ、無言の抵抗や愛情、季節や自然との一体感・・・・・・。9編全てを読み終わってみると、たしかに、そんな「素敵な日本人」が浮かび上がってくる。