宮本武蔵と戦い敗者となった側から武蔵を描く。鹿島新当流の"童殺し"と汚名を浴びせられた有馬喜兵衛、クサリ鎌の達人・シシド、京都の吉岡憲法(源左衛門)、柳生新陰流の大瀬戸と辻風、弟子の幸坂甚太郎、宿命的な敵となる巌流・津田小次郎、そして武蔵の父・宮本無二。武蔵は、本位田外記と於青の子であり、無二は己を殺す刺客として無双の勇者に武蔵(弁助)を育てたという設定だ。
「生死無用」の果たし合いの裏に、愛別離苦、五陰盛苦、怨憎会苦、求不得苦の四苦八苦があり、宿命的な業の世界がある。その生老病死の極まった世界で、剣豪たちの心の葛藤と、涙を遮断して死に向かう姿が描かれる。
今までの宮本武蔵像が砕け、敵・味方の一体化した世界にふれる。