デンジャラス  桐野夏生著.jpg谷崎潤一郎を支え、葛藤・嫉妬する3人の女性。妻の松子、その妹の重子、松子の前夫の子であり、重子の養子となった清一の妻・千萬子。狭い家族の人間模様は谷崎との距離感に起因し、谷崎はその時々に最も望む人間関係をやんわりとつくり貫く。「細雪」の中心的モデルとなり、それを誇る重子が静かに語る。その迫りくる緊迫感には隙間がない。

戦後の奔放さを身につけ谷崎に寵愛される若い千萬子への嫉妬は、3人の老いともあいまって苦しいほどだ。「松子姉の嫉妬は、私の嫉妬。松子姉の懊悩は、私の懊悩。そして、松子姉の狭量は、私の狭量でした」「結局、兄さんが1番好きなんは兄さん自身、てことですやろか」「兄さんは本当に大きな心で、誰にもよくしてくれました。・・・・・・でも、兄さんは、王国には必要ないと思った人間には、根本のところで冷酷です」――。そして谷崎は「夢と現のあわいを行ったり来たり。あなた(重子)ほど、僕の書く小説の中に生きた人はいませんでしたね」という。

「細雪」「痴人の愛」「鍵」「瘋癲老人日記」・・・・・・。久し振りに谷崎潤一郎の"業"の世界にふれた。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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