ネガティブ・ケイパビリティ  帚木蓬生著.jpg「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」――それがネガティブ・ケイパビリティ(負の能力、陰性能力)だという。19世紀の英国の詩人ジョン・キーツ、20世紀後半の精神科の権威W・R・ビオンを掘り起こし、「理解と不理解の微妙な暗闇」を描くシェイクスピアと紫式部の凄さをネガティブ・ケイパビリティの角度から浮き彫りにする。性急な結論、解答を求め、処理能力の早さを競う現代社会――。精神分析医も文学者も教育者も悩める現代人も、性急な確実性を求めずに答えの出ない事態に耐え続ける力が必要とされると指摘する。深く、本源的で考えさせられる。

「ネガティブ・ケイパビリティは拙速な理解ではなく、謎を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐えぬく力である」「人の病の最良の薬は人である」「治療ではなくトリートメントをする。傷んだ心を、ちょっとでもケアすればいい。ネガティブ・ケイパビリティとトリートメントは、私の臨床の両輪になっている」「希望する脳(脳は生来的に物事をポジティブに考えるようにできている)と伝統治療師」「人は誰でも、見守る眼や他人の理解のないところでは苦難に耐えられない(時間という日薬と眼を離さず見守る目薬の大切さ)」「小説家は宙吊りに耐える」「現代の教育はポジディブ・ケイパビリティの養成をめざす。問題解決のための教育だが、素養や教養、たしなみは早急に解答を出すのではなく、じっくり耐えて、熟慮することこそ教養である」「答えの出ない問題を探し続ける挑戦こそが教育の真髄でしょう」「この勧告決議案が採決されると踏んだ全権大使の松岡洋右は、憤然として会場から退出、国際連盟を脱退した・・・・・・こんなときこそ、指導者は踏みとどまって一考も再考も三考もすべきだった。ネガティブ・ケイパビリティは完全に失われていた」「(あの戦争で)針の穴に糸を通すようにして、何とか解決の道を探る、ネガティブ・ケイパビリティは軍人の頭にはなかった」「共感の成熟に寄り添っている伴走者こそがネガティブ・ケイパビリティ」「寛容は大きな力を持ち得ないが、寛容がないところでは必ずや物事を極端に走らせる。この寛容を支えているのがネガティブ・ケイパビリティ」・・・・・・。

長い人生、さまざまなことに遭遇する。「勝つことも大事だが、負けない自分をつくることだ。仏の異名は能忍という」「忍辱大力 智慧宝蔵」「自他不二の不軽の礼拝行」「哲学は辺境の防人である。辺境とは虚無と人間の境である」「諸法実相 如実知見」「能動の力と受動の力」・・・・・・。仏法、哲学で学んできたことを次々と想起して読み、味わった。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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