「構図が変化し始めた国際情勢」が副題。とくに東アジア情勢は北朝鮮の核・ミサイル開発、トランプ政権の誕生などから米朝緊張のなかにある。米中露、そして日本、韓国はどう動くか。自国の位置と役割を冷静かつ立体的、戦略的に考え対応しなければならない。しかも英国のEU離脱、米国のトランプ現象、日本も含めてポピュリズムに巻き込まれ、政治指導層の劣化が顕在化している、と宮家さんは懸念する。
南シナ海、中東・・・・・・。危機感が本書から迫ってくる。だからこそだと思うが、きわめて丁寧に、人類の歴史と戦争を説き起こし「力の空白・真空」という概念を使って、危機とそのプレーヤーのあり方を分析する。
国際関係論の主流は「勢力均衡」理論だが、動体視力を駆使しなければならない今、「力の空白・真空」という概念を出す。そして「『大真空』とは、一般現象としての『空白・真空』ではなく、『権力が行使されない』状態が、『数か月から一年程度の比較的短い期間内に生じ、それが政治的、軍事的に大きな影響を周辺に及ぼすような状態』だ」と定義する。
「国際社会と日本がなすべきこと」「日米韓で朝鮮半島の『力の大真空』を埋める」「南シナ海で柔軟かつ積極的に果たす役割」・・・・・・。
構造的分析から重要な提起がされている。