銀河鉄道の父.jpg宮沢賢治を、父・政次郎を描くことによって浮き彫りにする。「雨ニモマケズ・・・・・・」の印象もあり、郷土の悲惨な農民を背景にした宮沢賢治は、貧しく、病弱で、不遇と思われがちだが、じつは違う。父・政次郎は質屋を営み、家は裕福、町の名士でもある。長男・賢治への期待も大きく、注ぐ愛情はまさに"厳父の愛"。子煩悩を通り越してすさまじい。それが親子の"スレ違い"を生むが、根っ子の絆は深い。

賢治の作品は、その摩擦、アンビバレンツのなかから噴出したことを深く感じいった。「童話」と「雨ニモマケズ」が同居する違和感がスルスルと解かれる思いだ。賢治の人間形成は「父親・政次郎」「法華経信仰」「妹トシとの愛と死」、そして「封建から近代への時代の変貌」などがクッキリ投影されている。それがいずれも強烈に。

「賢治はなおも原稿用紙の場を見おろしつつ、おのずから、つぶやきが口に出た。『・・・・・・おらは、お父さんになりたかったのす』」「ふりかえれば、政次郎ほど大きな存在はなかった。自分の恩人であり、保護者であり、教師であり、金主であり、上司であり、抑圧者であり、好敵手であり、貢献者であり、それらすべてであることにおいて政次郎は手を抜くことをしなかった。・・・・・・巨大で複雑な感情の対象、それが宮沢政次郎という人なのだ」――。

賢治を陰で支えた政次郎は、早逝した賢治(昭和8年、37歳)よりも、はるか長く、戦後(昭和32年)まで生きる。そして改宗までする。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

月別アーカイブ

上へ