「『知の再武装』で100歳人生を生き抜く」が副題。人生100年時代、80歳以上の人口が1000万人を超えた。60歳還暦後、2周目の人生、それも長い。高齢者のみならず、若い人も以後、80年近い人生が待ち構えている。定年後は余生ではない。寺島さんは「私は高齢化によって劣化する人間という見方を共有しない」「人間の知能の潜在能力は高い。心の底を見つめ、全体像に立ってこそ、美しい世界のあり方を見抜く力は進化しうる。だからこそ"知の再武装"を志向するのだ」といい、そのうえで、社会システム・制度の再設計を本格的に進めるギリギリの時だと指摘する。健全な高齢化社会を創造するために、体系的な英知の結集、高齢化社会工学「ジェロントロジー」を提唱する。
大事なのは、大きな構想力と枠組みで高齢化社会を議論すること、とくに「高齢者の参画プラットフォーム」の形成だ。深刻なことは山ほどある。たとえば、「都市郊外のニュータウンに住む都市中間層の高齢化」で、これまでの日本を担ってきた人々、男性が"暴走老人"化していることなどだ。全く同感、いかに対応し、創るかだ。「知の再武装がなぜ必要か、何を学び直すか」「生命科学がもたらす新しい人間観、AIの進化と人間が人間であること」「ジェロントロジーへの新たな視界――流動性知能と結晶性知能、第三の知能としての唯識性知能」「医療ジェロントロジー、宗教ジェロントロジー、金融ジェロントロジー」「高齢者の社会参画――食と農、高度観光人材、NPO・NGO」など、具体的に示している。