現代社会はどこに向かうか.jpg副題は「高原の見晴らしを切り開くこと」。貨幣経済と都市の原理が社会全域に浸透し、消費や生産は勿論、すべてが無限に発展する「近代」という原理が今、環境的にも資源的にも、人間の生きる「世界の有限性」に出会うことになった。歴史の第二の曲がり角に立つ現代社会は、どのような方向に向かい、人間の精神はどのような方向に向かうのか。時代の見晴らしをどのように積極的に切り開くことができるか。見田先生の多数の著作を若い頃から読んできたが、きわめて刺激的。日常の思考から距離を置いて時代を把えることに恵まれた。

日本と世界の青年の1970年代から始まる意識の変化と、巨視的な人間という生物種の消長・ロジスティック曲線が提示される。この40年、青年の精神が激変しているものとして「近代家父長制家族システムの解体とジェンダー関係の意識の解体」「経済成長課題の完了。生活満足度の増大(結社・闘争性の現象と保守化)」「あの世、お守り、奇跡など魔術的なるものの再生、近代の基本的な特質である合理主義的な世界像のゆらぎ」の3つを指摘する。生活スタイル、消費行動も大きく変化し、シンプル化、ナチュラル化、脱商品・脱バブリー、経済に依存しない幸福の領域の拡大が深部で進行している。それは欧米でも幸福感の増大、脱物質主義として現われ、「成長と開発」に代わって「共存と共生」「寛容と他者の尊重」「単純な至福の感受」の基調音が奏でられる。そして、「未来の約束によってはじめて生きていることの『意味』が支えられているのは現在の生が不幸であるからだ」「生きることの単純な幸福を感受する能力。取り戻すべき基底のあり方は、この世界の中にただ生きていることの『幸福感受性』である」という。さらに「近代の最終ステージとしての"現代"の特質は、人びとが未来を失ったことにある。加速し続けてきた歴史の突然の減速が、生のリアリティの空疎をもたらしている」と指摘する。

時代の空気の潮目は変わろうとしている。必要以上に富を際限なく追求する者は軽蔑され、「多くを人に与えられる人」が富める豊かな者という感覚が広がっていく。持続可能な世界、破壊ではなく「永続する幸福」への「幸福感受性の奪還」を示す。そして「20世紀型革命の破綻から何を学ぶか――卵を内側から破る。胚芽をつくること。破壊ではなく肯定する革命」を明示する。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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