「0歳から100歳までの哲学入門」が副題。哲学とは人生、世界を自分で考えることだ。生老病死――命の終わり、人生のはかなさ、四苦八苦を考えることだが、この情報社会、教育が浸透し、仕事を余儀なくされている喧噪の社会ではなかなか難しい。自由に考えているかといえば、世の常識や軌範、人間関係、社会の通念や仕組み、場の空気を読むことを求められているゆえに、思考も発言も無意識的に自己規制している。「考えること」とは「自由になること」、考えることによって自由になる。自己を縛りつける制約から自らを解き放つことだ、という。そして「対話が哲学的になった瞬間」には「体が軽くなってふっと浮く感覚。一気に、あるいはゆったりと広がるような感覚。目の前が開け、明るくなる感覚」を体全体で感ずる。自由と責任をいっしょに取り戻す。自分自身を生きることなのだという。
その哲学的対話の生きた場をどうつくるのか。哲学とは「問い、考え、悟り、聞くこと」だが、場をどうつくるか。座談会、修行の集いの場、対話と場づくりの重要性を考えさせられた。その意義とともに中身をもっと詰めなければと思う。「哲学対話」は最近とくに試みられているようだ。本書では、その「考える方法」が具体的に示される。