ホモ・デウス上.jpgホモ・デウス下.jpg「テクノロジーとサピエンスの未来」が副題。前作の「サピエンス全史」では、7万年前、認知革命が起き、言語が出現。さらに1万2千年前は農業革命、そして書記体系(記号を使っての情報保存)、貨幣を生み、近代科学の成立、科学と帝国の融合等を経て、全地球の主となったサピエンスが描かれた。そして最後に「私たちは以前より幸福になっているのか」「正真正銘のサイボーグ、バイオニック生命体に変身する超ホモ・サピエンス時代に突入する瀬戸際である」との2つの痛烈な疑問を突きつけた。

その続編が本書。「人間は至福と不死、神性を追い求めることで、自らをホモ・デウス(神のヒト)へとアップグレードしようとしている」「人間は健康と幸福と力を追求しながら、自らの機能を徐々に変えていき、ついにはもう人間ではなくなってしまうだろう」という。いったい、我々はどこへ向かうのかを、生物学的に、科学・工学的に、科学と宗教や歴史を分析して提示する。「人類が新たに取り組むべきこと」「人新世」「人間の輝き」「物語の語り手」「科学と宗教というおかしな夫婦」の5章が上巻だ。そして下巻は「現代の契約」「人間至上主義革命」「研究室の時限爆弾」「知識と意識の大いなる分離」「意識の大海」「データ教」で、これら第3部は「ホモ・サピエンスによる制御が不能になる」だ。

現代社会は人間至上主義の教義を信じており、それを実行するため科学を利用する。科学と人間至上主義の間の現代の契約は崩れるだろうか。科学と何らかのポスト人間至上主義の宗教との取り決めに場所を譲る可能性があるのではなかろうか。その新しい取り決めとは一体何かを掘り下げる。生物は、遺伝子やホルモン、ニューロンに支配されたただのアルゴリズムであり、コンピューターが、人間を自分自身よりも詳しく把握することになる。人間至上主義に取って代わる有力なものはデータ至上主義だが、それは人間をアップグレードしても対処できない。「人間はその構築者からチップへ、さらにはデータへと落ちぶれ、データの奔流に溶けて消えかねない」と危惧する。しかし、そうした現実の動向を分析しつつも、最後に3つの重要な問いを提起して締めくくる。「生き物は本当にアルゴリズムにすぎないのか? そして、生命は本当にデータ処理にすぎないのか?」「知能と意識のどちらのほうが価値があるのか?」「意識は持たないものの、高度な知能を備えたアルゴリズムが、私たちが自分自身を知るよりもよく私たちのことを知るようになったとき、社会や政治や日常生活はどうなるのか」――。当然、そこには「世界に意味を与えている虚構を読み解くことが、絶対に必要となる」ということだ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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