死にがいを求めて生きているの.jpg2019年、螺旋プロジェクトのなかの一作―。8組9名の作家陣が古代から未来までの日本を舞台に、「海族」と「山族」が対立するというテーマで描いた競作企画。この「死にがいを求めて生きているの」は朝井リョウ氏が「平成」を描く。

「逃げる中高年、欲望のない若者たち」といったのは村上龍だ。たしかに、昭和の時代までは「食べることに懸命」「生きることに必死」という時代だったが、平成の時代の「デフレ」「災害の頻発」「そこそこ幸せな日本」のなか、「生きがい」が語られるようになった。

本書は、性格の全く異なる親友2人の青年期の交わりが描かれる。堀北雄介と南水智也。周りを囲む坂本亜矢奈、前田一洋、安藤与志樹ら。堀北雄介は血気盛ん、対立をつくり注目を浴びることで存在を確認したい。「いつも手段と目的が逆転している」「喋って満足するだけのおままごとはもう終わり」「無理やりターゲットを見つけて、反発する理由をどうにか生み出して、対立構造作ってハブる。そうでもしないと生きがいがなくなっちゃう」「煙が上がるような摩擦がないと、自分がどこにいるか自分で確認できないあの感じ」――。平成はそれに抗して「ナンバーワンよりオンリーワン」といったが、「人間は、自分の物差しだけで自分自身を確認できるほど強くない」。全く堀北雄介とは逆の冷静で平衡感覚をもつ性格の智也も、雄介をなだめながらも自身の内に同種のものがあると思うのだ。

自分の存在を実感する。人と人、人と人の間としての人間。その存在の課題が微温的、デフレ社会の内に不安と不満をため込む。智也は今、植物状態、雄介はそれを献身的に見守る。そこにも存在を実感するための歪みがある。後半から最終章に至るまで緊迫感がいや増す。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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