「日本史を学ぶことは、日本人とは何かを考えることだと思う」と本郷さんはいい、「私は井の中の蛙だと思う」という。本書は日本人と「この国のカタチ」が二人の間で自由闊達に論じられる。なんと、日本史をどうとらえるのかの、東西のバトルが行われているのだ。京都史観と関東史観。「ひらたく言えば、京都が拠点となる朝廷の威光を大きくえがこうとする。朝廷をとりまく公家や寺社の存在感を特筆する。7、8世紀にできた律令のしくみが、のちのちまで社会を左右したという見方の京都史観」と「律令等の秩序をくずしていく新しい勢力に光を当てる。武士の革新性を輝かしくとらえてきた見方の関東史観」だ。権門体制論、東国国家論、顕密体制論等の「日本のかたち」が紹介され、京都における「女官の色香、誘惑」も歴史に影響を与えたのではないかとまで語る。
「ここだけの話(日本に古代はない、皇国史観の亡霊)」の序からバトルが始まる。「神話と統治(天皇家の存続と神話、伊勢神宮と鈴木姓が多い理由)」「祭り上げの政治技術(摂関政治は不安定だった、官僚主導=摂関政治と官邸主導=院政、幻の関東独立国)」「武士と武芸の源流(源氏・平氏は傭兵集団、在地領主の誕生、武家と公家の埋められない差、女官の誘惑)」「『日本国』意識(日本人意識の芽生え、元寇に抗した武士と日本のまとまり、東国国家論では天皇と将軍は並び立つ)」「絶対王政・室町幕府(室町幕府はゼニカネの政権、日野富子とその一族と義政、寺は租税回避地だった!?、禅寺は観光ホテル)」「朝廷は下剋上で輝く(戦国大名は京都の律令制と訣別し自分の力で土地を支配、貴族は文化で延命する、信長は朝廷を滅ぼそうとしたか、秀吉・家康は朝廷をどう見たか)」「鎖国と米本位制(銭本位制から米本位制へ、幕府の貴穀賤金、家康は鎖国的でもなかった、寺社が資本主義の抜け道)」「明治維新はブルジョワ革命だった(倒幕の軍資金は三井等から、大坂商人の腹積もり、奇兵隊のスポンサー下関の豪商、天皇の絶対性は方便だったか、平和な明治維新というウソ・流血革命)」「日本人と天皇(権威と権力、象徴天皇制=天皇機関説!?)」・・・・・・。
自由闊達できわめて面白い。