卒寿の自画像.jpg「時代の証言者」(読売新聞の連載)をもとにした中西進先生の半世記。鵜飼哲夫氏が聞き手となってまとめたもの。「やっと私自身も、ある時代を生きて来た、と実感し、これを伝えなければならないのだと自覚をもつに到った。戦争、大学紛争、そしてアナーキーな飽和。そんないびつな三段跳びが、わが半生の中から見えてきた時のことである」と語っている。1929年(昭和4年)生まれで、戦争のなかに青少年時代があった。「体力、身力を養う、それがわたしの究極の持論です」「心の働きにも身体が関わっています。"腹が立つ""腸が煮えくりかえる"など、知・情・意、つまり知性や感情、意思を支えるものが身体の力です」――時代の圧力で刻まれた人生哲学。その身力のおかげで卒寿を迎えられたという。

「青春の自画像の特色の一つが含羞。恥ずかしさ、ためらい、不安感、未達成感があるからこそ、人は奥ゆかしくなり、やさしくなる。反対は傲慢だ」「3歳で詠んだ梅の俳句」「大失敗で学んだ父の『義』」「転校生はいじめられた。痛感した母の愛」「敗戦の日 静寂とカラス。人を焼き日月爛(ただ)れて戦熄む」「短歌に熱中した大学時代」「万葉集は男性的でおおらかで『ますらおぶり』、故郷を離れる心を歌う『防人の歌』をはじめ人間の息遣いを感じられる魅力がある。最初にひかれた家持の歌」「昼は非常勤講師 夜は論文」「初春の令月にして、気淑く風和ぎ・・・・・・。 四季折々に自然が変化する日本、花鳥風月を大切にする日本の文化」「渡来人・山上憶良、中国における"瓜や栗"、"雑"の奥深さ」「平和を願う17条の憲法。和を以て貴しとなす。10条の『怒りを棄てて』『われ必ずしも聖にあらず、われ必ずしも愚にあらず、ともに凡夫のみ(凡夫である自覚が平和の精神の原点にある)』」「『もの』が物語を生み、『もののあわれ』や『もの狂おしさ』を感じさせる。もののあわれを感じない、情緒なき世界になったらとてもさみしいことではないか」「上からは明治などというけれど 治明(おさまるめい)と下からは読む。令和とは上から読めば令和だが 下から読めば和(やまと)し令(うるわ)し」「まねるのではなく取り込むのが日本文化」「トルストイの平和論――クリミア戦争の経験者であるトルストイは『戦争とは平和外交の失敗である』という」「令和とは令(うるわ)しき平和」「日本の平和思想17条の憲法」「戦争では平和は勝ち取れない。仏の教え、宗教心を高め合うことで戦争をなくそうとしたアショカ王。明日香村にアショカ王の碑がある」「大切な令和の精神」・・・・・・。どのページからも日本文化の心が沁み入る。ユーモアを交えての語りがなんとも心持よい。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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