1989年、合計特殊出生率がそれまでの過去最低の1.57を更新して以来、日本はさまざまな少子化対策をとってきた。わが党が「児童手当」「幼児教育の無償化」「待機児童ゼロ」など「子育て支援」の推進役であったことは間違いない。安倍内閣での「希望出生率1.8」、菅内閣での「不妊治療の保険適用」など、子育て支援が政治の大事な柱となっている。本書は、子育て支援策が3つの分野においてどのような効果を及ぼすかを、厳密な経済理論、統計データに基づいて実証・分析を行う。3つの分野とは①出生率の向上への効果②次世代への投資として子どもの発達への効果③私的な子育てから解放された女性の労働市場進出への効果――である。しかも分析は、世界各国の研究成果を丹念に比較研究している。きわめて専門的、学術的な研究となっている。
「子育て支援と出生率の向上」――。「全体としていえるのは出生率は児童手当などの現金給付政策にある程度反応しうる」「第2子の出生に対しての効果は相対的に大きい」「日本でも保育所整備の方が現金給付よりも有効な少子化対策だが、その差は大きなものではない」「ジェンダーの視点で見ると、男性の家事・育児参加割合の高い国ほど出生率も高くなっている」・・・・・・。
「子育て支援は次世代への投資」――。「育休制度の充実は必ずしも子どもの発達に対して影響しない」「幼児教育のIQに対する効果が数年で消えたとしても、攻撃性や多動性など周囲との軋轢を生じさせる外在化問題行動の減少、非認知能力の改善は長期に及ぶ」「とくに社会経済的に恵まれない家庭で育つ子には発達改善効果がある」「保育所通いは子どもの言語発達を促す。保育の質が大切」・・・・・・。
「子育て支援がうながす女性活躍」――。「育休制度は出生率をあまり上昇させない」「育休3年制への移行はほとんど就業も増やさないし、女性労働者に対する企業側の需要を減少させる悪影響をもつ」「1年間の公的育休制度は女性就業を促進するが、3年間に延長しても効果はほとんどない」「希望するすべての家庭が保育所を利用できるようになるのが理想。保育の質を確保したうえで、そうした方向に政策を進めるべき」・・・・・・。
「子育て支援」策を世界の統計データを用いて厳密に分析している著書。