安いニッポン.jpg「『価格』が示す停滞日本」が副題。ディズニーもダイソーも世界で最安値水準、初任給はスイスの3分の1、ビッグマックも外国では高い。ニセコは外国人が買って地価上昇率は日本トップクラスで居酒屋のラーメンは3000円。日本では高い港区の年平均所得1200万円はサンフランシスコでは「低所得」に当たる。ホテルも日本はきわめて安い・・・・・・。要するに、20年も「デフレ」が続き、物価も安いが賃金も低い、"デフレスパイル""デフレ基調"が続いているということだ。本書は、マクロ経済的な"需要不足""デフレ"から論ずるのではなく、現場の企業経営、消費者心理、とくに日本特有の企業経営、終身雇用などの日本的雇用形態、バブルに至るまでの成功体験、内向きの日本社会・・・・・・。多くの現場の根強い要因、合成の誤謬などを掘り下げる。現場の心理と行動から見た「デフレとその停滞からの脱却」だ。

「なぜこれほど安いのか――300円牛丼、1000円カット」「日本の物価はこの20年ほとんど変わらず、アメリカは2%ずつ上昇し、2000年の5割増し」「消費者の低価格志向は強い――賃金上がらず、非正規雇用の増大(生産者への還元を思うと適正価格にすべきだが、自分の所得水準を考えると値上げは困る)」「日本企業はもっと価格を上げるべきだが、消費者はわかってくれない。企業も安く売るが哲学になっている」「日本は解雇規制が厳しく、解雇できない。また再就職が難しい」「日本では価格を上げると消費者が逃げる。人件費を上げると商品の値上げをせざるを得なくなる」「アフターコロナ時代――低価格志向は強まる。製造者は"いいモノを作ったら高くても売れるだろう"と思うが甘い。だから強気でやっても撤退となる。マネージメントの基幹は価格戦略であり、客単価から商品開発しないといけない(田中くら寿司社長)」「日本だけが低賃金なのは、①労働生産性が停滞している②多様な賃金交渉のメカニズムがない」「また逆に、日本の生産性が低いのは、価格付けの『安さ』にある」「平均賃金が上がらないのは、中高年男性の賃金が下がった押し下げにもある」「日本は終身雇用のため、初任給が抑制されている。今の世界の状況とは全く違う。それが人材獲得のネックとなっている」「一括採用の"メンバーシップ型"ではなく最適人材配置の"ジョブ型"雇用への移行が開始されているが、役割をはっきりさせて評価・処遇を連動させる"ロール型雇用(役割型)"も一考を」「個人が努力して得る"スキルアップ"に対する昇格、昇給をする時に来ている」「キャリアアップして"賃金は上がるもの"を当たり前にしよう」「買われるニッポン――アジア国籍になる日本の町工場」「人材が流出し、お家芸"アニメ"も崩れる(給料が安すぎ)」「水産業も世界の消費量急増で"買い負ける"日本」・・・・・・。

「支出を減らすのではなく、収入を増やす努力にシフトしよう」「日本の"安さ"は、いずれ日本に返ってくる」「労働市場の見直しで安いニッポン脱却を」と訴える。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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