ooruri.jpg「コーン」「コーン」という流星群の音が読後に余韻として残る。18歳、高校3年生の夏――。6人を中心にした仲間が、文化祭に出展する空き缶を集めた巨大なタペストリーを制作する。校舎の屋上から吊り下げた驚くべき大きさのものだ。近くに進出してきたチェーンのドラッグストアに苦戦する薬局を営む種村久志、東京の番組制作会社を辞め弁護士を目指して勉強中の勢田修、中学教師をしている伊東千佳、天文学の研究者となったスイ子こと山際彗子、会社を辞め引きこもり状態の梅野和也、そして空き缶タペストリーを言い出した張本人・槙恵介。恵介はなぜかタペストリーが完成する前に突然に仲間を抜け、その1年後の夏に死んだ。

それから28年、「こんなはずではなかった」と、ため息をつきながら45歳を懸命に生きている皆のもとに、スイ子が秦野市に帰ってきた。手作りで太陽系の果てを観測する天文台を建てるというのだ。久志、修、千佳らは、スイ子の計画に力を貸すことになるが、次第にあの高校3年の輝ける夏に思いを馳せていく。そして、恵介やスイ子が、思いもかけない悩みを抱えながらあの夏を過ごしていたことを知るのだった。「完璧」と思われていた恵介が他に見せなかった心の闇と決断を。

「人間は誰しも、一つの星を見つめて歩いている。・・・・・・それを頼りに歩いていけばいいと思っていた星が突然光を失い・・・・・・。けれど『星食』はいずれ終わる。その時は、見失った星をまた探してもいいし、別の星を見つけて生きていってもいい」「そう、星を見つけるためには、天文台が必要だ。だから今はあれこれ悩むのをやめて、この天文台を作り上げよう。彗子のためではなく、自分のために」「彗子は洟をすすり、千佳の顔を見た。秦野に戻ってくるのは怖かった。だけど、戻ってくるしかなかった。ここで一から始めて、恵介と18歳の自分に向き合わない限り、わたしはもう二度と星にも向き合えない」・・・・・・

そしてオオルリが導いてくれた天文台だからと、「オオルリ天文台」を、28年の歳月を経た仲間が再結集して作り上げていく。流星電波観測の音が響くのを聴く。なんとも澄みきった星空の心象空間が広がっていく。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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